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弁護士法人柴田・中川法律特許事務所

愛知県豊橋市・静岡県浜松市の弁護士11名・弁理士2名が所属する法律特許事務所

事業承継について、考えてみませんか?

2013/9/12 木曜日 17:29

 会社経営者にとって、「事業承継」をどのように行うかは、大変悩ましい問題です。
 経営者自身が元気なうちは、つい先送りしがちな問題ですが、何も対策を取らないまま、経営者が不慮の事故や病に倒れたりした場合、会社が立ちいかなくなってしまうことも十分に考えられるので、早めの対策が必要です。
 では、具体的に事業承継には、どのような問題があるのでしょうか。
 事業承継は、①ノウハウなどの経営そのものの承継②自社株式・事業用資産の承継という2つの側面があり、法律的に主に問題となるのは②の方です。
 現経営者が自社株式や会社の土地建物などの事業用資産を所有している場合、円滑な事業承継を行うには、自社株式及び事業用資産を現経営者から後継者に集中して引き継がせる必要があります。
 ところが、何も対策を取らずに現経営者が亡くなった場合、自社株式も事業用資産も、原則として、現経営者の法定相続人が法定相続分に従って相続することになってしまいます。
 例えば、代表取締役である現経営者に子どもが4人おり、そのうち、実際に経営実務を担当している取締役である長男を後継者にしたいと考えていたとします(現経営者の配偶者はすでに亡くなっているものとします)。しかし、現経営者が特に対策を取らず亡くなってしまうと、兄弟4人が4分の1ずつ現経営者の遺産を相続することになるので、現経営者が自社株式を100%所有していた場合、長男は、25%しか相続できません。すると、仮に長男とほかの兄弟が対立した場合、株式の75%を所有する他の兄弟から、長男が取締役を解任されてしまい、会社経営にかかわることができなくなってしまう危険が生じます。そうなると、これまで経営実務を担ってきた長男の不在により、会社経営に混乱が生じ、会社の存立自体も危うくなる可能性もあります。
 このような事態を避けるために、いくつかの対策が考えられます。
 まず、現経営者が生前に、自社株式・事業用資産を後継者に贈与したり、または、後継者にすべて相続させる旨の遺言を作成する方法があります。これにより、ひとまずは後継者に自社株式・事業用資産を集中することができます。
 しかし、この生前贈与や遺言が、民法に定められた「遺留分」を侵害する場合は、問題が生じてきます。「遺留分」とは、相続人に保障された最低限の権利であり、先の例でいうと、現経営者の子4人は、それぞれ、8分の1の遺留分を有するため、長男に対して他の兄弟3人が、それぞれ遺留分として遺産の8分の1ずつを請求した場合、結果として、自社株式や事業用資産が分散してしまう可能性も十分にあります。
 このような、事業承継と遺留分との調整を図るため、平成20年に成立した経営承継円滑化法には、遺留分に関する民法の特例が定められています。この特例は、現経営者の推定相続人全員の合意により、自社株式を遺留分算定の基礎財産から除外することや、遺留分算定の際の自社株式の価額をある時点に固定することができることを定めています。現経営者の影響力があるうちに、これらの対策をとることができれば、遺留分による紛争を防いで、自社株式を後継者に集中させることができます。
 また、そのほかにも、会社法に規定のある「種類株式」を事業承継に活用する方法もあります。例えば、議決権のない株式を発行しておいて、後継者以外の者に議決権のない株式を、後継者には通常の議決権のある株式をそれぞれ取得させて、後継者に議決権を集中させるという方法があります。
 事業承継対策として、どのような方法を取るのが良いかは、それぞれの会社の状況によって異なります。専門性の高い難しい分野になりますので、ぜひ、早めに弁護士にご相談いただきたいと思います。

非嫡出子の相続について

2013/8/9 金曜日 12:39

1 民法第900条第4号但書は、結婚していない男女間に生まれた子(以下、「非嫡出子(ひちゃくしゅつし)」といいます)の相続分は、結婚している男女間に生まれた子(以下、「嫡出子(ちゃくしゅつし)」といいます)の相続分の2分の1とすることを定めています。
  つまり、ある男性Aさんに、妻との間に生まれたBさんという子どもと、妻以外の女性との間に生まれたCさんがいた場合、Aさんが亡くなった時に、非嫡出子であるCさんは、嫡出子であるBさんの半分しか財産をもらえないことになります。
  この民法の定めは、きちんと婚姻届を提出して法律上の婚姻をすることを尊重する趣旨で定められたといわれています。
  ところが、この定めが、憲法の法の下の平等(憲法第14条)に反し、非嫡出子を不当に差別するものではないかということが、以前から争われてきました。例を挙げて見ていきましょう。
2 仮に、Aさん夫婦とその子どもであるBさんが、長年平穏な家庭を営んでおり、Aさんの死後、これまで会ったこともないCさんが、突然Aさんの子どもだと名乗り出てきたような場合には、長年親子として生活してきたBさんが多く財産を相続することが、理屈にかなっているようにも思えます。
  しかし、例えば、Aさんが妻と結婚してBさんが生まれたものの、すぐに事実上離婚状態となり、離婚届を提出しないまま別の女性と家庭を作り、Cさんが生まれて、長年平穏な家庭生活を営んできたような場合はどうでしょうか?この場合、Aさんと長年親子として生活してきたのはCさんであるにもかかわらず、両親が法律上の婚姻関係になかったというだけで、CさんはBさんの半分しか財産を相続することができないことになります。
  このように、家族のあり方は、それぞれの家庭によって大きく異なるにもかかわらず、一律に、非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とすることは、平等とはいえないように思われます。
  また、そもそも、嫡出子として生まれるか、非嫡出子として生まれるかは、その子どもには何の責任もないはずなのに、相続において不平等に扱われるとすれば、やはり問題があるでしょう。
3 この問題について、これまで最高裁判所は、憲法に反するという判断をしたことはありませんでした。
  しかし、この問題が争われた裁判について、最高裁判所で弁論期日が開かれたことから、近いうちに、最高裁判所が違憲の判断を下す可能性が大きくなってきました。
  家族関係が多様化した現在においては、両親が法律上の婚姻関係にあったか否かだけで相続において差を設けるのは、平等に反するとの判断が働いたものと思われます。
4 では、今後、最高裁判所で違憲判決が出た場合、相続にはどのように影響してくるのでしょうか。
  まず、違憲判決後に行われる相続手続については、現在の民法第900条第4号但書は適用されず、嫡出子と非嫡出子の相続分は平等として取り扱われることになるでしょう。また、立法府も、違憲判決を受けて、早期に同条項を削除することになると思われます。
  では、非嫡出子と嫡出子が関係する相続において、既に遺産分割がなされてしまった案件についてはどうなるのでしょうか?
  違憲判決の効力が、直ちに他の事件や過去の事件にさかのぼって及ぶわけではないので、既になされた遺産分割が覆ってしまうことにはなりません。ただし、既になされた遺産分割の当事者である非嫡出子が、本来は嫡出子と同様に相続できるはずであったのに、民法第900条第4号但書があったことによって、嫡出子の2分の1の相続分で遺産分割を成立させざるを得なかったとして、遺産分割の無効を争ったとすれば、場合によっては、無効となる可能性は残ります。
  おそらく、このような問題に対処するために、違憲判決がなされるとすれば、その判決中で、過去の遺産分割の効力に関して何らかの言及がなされると思われます。
  いずれにせよ、非常に重要な判決になりそうなので、ぜひ最高裁の判断には注目していきたいと思います。

老人の介護事故

2013/6/12 水曜日 10:54

1 はじめに
 我が国は、高齢化、それも近年は超高齢化の時代に突入しており、特別養護 老人ホーム、デイサービス施設その他の老人施設の入所者・利用者が著しく増加しています。
 これに比例するかのように、これら施設の内外において、入所者・利用者が関係する転倒、転落、誤嚥等の介護事故が増加する傾向にあります。
 介護事故が発生すると、その内容・程度によっては、介護事業者については、損害賠償責任または行政的責任(介護保険指定業者としての指定の取消等)を、介護担当職員については、損害賠償責任または刑事責任(業務上過失致死傷罪等)を問われることがあり、介護事業者および介護担当職 員にとっては、重大な問題を抱える危険性があります。
 そこで、今回は、介護事故の中でも頻度の高い施設内での転倒事故について、裁判例に即して考えてみることとします。
2 事故の内容
 社会福祉法人が運営するデイサービス施設の職員は、85歳の女性(要介護 度2、歩行には杖が必要)が、帰宅するに際しトイレに行くに当り、トイレまでは同行したものの、トイレ内への同行を拒否されたため、女性一人で杖を使用して便器まで歩かせたところ、杖が滑って転倒し、右大腿骨けい部内側骨折の傷害を負い、後遺障害が残り要介護度4となったというものです。
3 裁判所の判断
 裁判では、①施設に安全配慮義務(入所者・利用者が危険な状態に陥らないような配慮をするべき義務)違反があるか否か、②女性に過失があるか否か、あるとすればその割合が問題となっています。
(1) ①について
 裁判所は、女性が使用したトイレは、入口から便器まで距離が約1.8メートルあり、しかも、入口から便器までの壁には手摺がないため、女性が一人で杖を使用して歩行すれば、転倒することは十分に予想することができたのであるから、職員は、たとえ女性からトイレ内への同行を拒否されたとしても女性を一人で便器に向かわせるべきではなく、女性を説得して便器までの歩行を介護する義務を負担しており、この義務を尽くさず、女性を一人で歩行させた点に安全配慮義務違反があるとしました。
(2) ②について
 裁判所は、女性は、職員に対しトイレ内への同行を求めず、かえって同行を拒否してトイレのドアを閉めて一人で便器に向って歩いて誤って転倒したのであるから、女性にも事故の発生について過失があり、その割合は3割であるとしました。
4 本件から学ぶべき点
 私は、本件判決は、結論、理由ともに相当であると考えています。
 そこで、本件から、介護事業者および老人施設の入所者・利用者ともに学ぶべき点を指摘すると次のとおりであると考えます。
 まず、介護事業者および介護担当職員は、仮に、入所者・利用者が介護を拒否した場合であっても、安易に従ってはならず、入所者・利用者に対し、介護を受けないことによる危険性とそれを回避するために介護が必要であることを専門的観点から十分に説明して、介護を受けるよう説得すべきであるということです。
 次に、入所者・利用者も素直に介護担当職員の介護を受けることが自身の安全のためにも良いと考えるべきであるということです。
                                                                     以 上

労働時間

2013/5/2 木曜日 9:58

1 はじめに
居酒屋で飲んでいると、隣の席から「いや~、うちの会社遅くまで仕事させておいてさあ、それで給料でないんだよなあ、サービス残業辛いよ」との声がよく聞こえてきます。居酒屋では単なる会社への愚痴で終わる話ですが、発展させてこの問題を法律的に考えるとどうなるのでしょうか、簡単なケースをもとにお話ししたいと思います。

2 事例

(1)質問1
私は、販売員をしています。その日はとても忙しかったので、定時の午後6時を過ぎても店を開けるよう言われ、私も残ってレジ打ちに追われていまし た。しかしながら、午後7時からは一人もお客さんが来なかったので、8時に閉めることになったのですが、午後7時からの1時間ボーっとして過ごしてし まいました。使用者からは「キミは、午後7時から8時までの1時間までは何もしていなかったじゃないか。残業代なんて出るはずがない」と言われてしま いましたが、午後6時から午後8時までの2時間分につき、残業代はもらえますよね?

(2)質問2
私は、ビルの警備員をしています。業務内容は夜間の巡回、監視ですが、業務の合間に仮眠時間が2時間だけ認められています。場所はビル内の  仮眠室で、ビル内の警報が鳴れば対応しなければなりません。なぜかこのビルではよく警報が鳴るんですよ・・。使用者からは、「キミは、その時間寝て いるじゃないか。その時間分の賃金は払わない」と言われています。確かに私はその時間には寝ていますけど、この時間の分の給料も出ますよね?

3 労働時間とは

(1)この事例には、質問者の地位や残業代としての手当支給、そして就業規則上の規定など様々な問題がありますが、今回は、賃金、時間外手当を支 払うための前提となる労働時間に絞って述べていきたいと思います。

(2)まず、労働者が労働をしたことに対する対価として、使用者に対して賃金請求をすることができるのは当然です。今回の事例1では、質問者の働いた午後6時から8時までの時間、事例2では仮眠時間としての2時間が労基法上の「労働時間」にあたれば、賃金または時間外手当を支払ってもらえる可 能性があります。
では、「労働時間」とはいかなる時間を指すのでしょうか。
最一小判平成12・3・9民集54巻3号801頁、判タ1029号161頁・三菱重工長崎造船事件では、「労働時間」とは、労働者が使用者の指揮命令下 に置かれている時間、をいい、この労働時間に該当するか否かは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かによ り客観的に定まる旨判断しています。
また、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていた、という部分について、上記判例は、「労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所 内で行うことを事業者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外に行うものとされている場合であっても、当該  行為は特段の事情ない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ・・る」と述べています。

(3)では、今回の事例1、事例2にそれぞれ当てはめてみましょう。
(ⅰ)事例1
本件では、質問者は午後6時から午後7時までは、客の対応をしていたとのことですから、「労働時間」に該当するのは誰の目から見ても明らかです。
午後7時から午後8時までの間は、一人も客が来なかったとのことですが、もし客が来たら質問者は対応をするよう言われている(もしくは、質問者もそ れを分かっているので何も言われていない)、というのが普通ですよね。面倒という理由で対応しなかったら使用者に怒られますよね。すなわち、これ  は、使用者の指示があれば直ちに作業に従事しなければならない時間、ということになるわけです。
したがって、「労働時間」にあたるわけです。
(ⅱ)事例2
本件では、質問者は仮眠時間といえども、ビル内で仮眠するよう使用者から言われており、家に帰って眠れるというわけではありません。また、ビル内 の警報が鳴れば対応するよう使用者から言われていることも、質問者が使用者の指揮命令下にあると評価できます。
確かに、質問者の対応は、警報が鳴ったときに限られるとは言えますが、頻繁に警報が鳴り、対応に駆り出されるという点で、対応の必要が皆無に等し いなどの事情はありませんから、指揮命令下におかれているといえます。
したがって、これも「労働時間」にあたります。

4 おわりに
労働時間をめぐる賃金、時間外手当の問題には、今回取り上げた問題以外にも、冒頭で述べたように、賃金請求者が「管理監督者」の地位にあるか、割増賃金に対応する手当の支給がされているか、など、複雑な問題が存在しています。
後々のトラブルを防ぐためにも、早めに弁護士に相談することをお勧めします。

有期労働契約が無期労働契約に変わる!?

2013/3/29 金曜日 23:27

1 はじめに

 2012年8月に労働契約法の一部が改正され、一定の条件を満たしたような場合には、有期労働契約(期間の定めのある労働契約)が無期労働契約(期間の定めのない労働契約)に転換する旨の規定が定められました(無期転換ルール)。2013年4月1日から施行されます。今回は、この点についてお話をしようと思います。

 

2 概要

 有期労働契約が5年を超えて反復更新されている(通算契約期間が5年を超えている)場合に、当該労働者が無期労働契約の締結の申し込みをしたときは、使用者は、別段の定めがある部分を除いて従前と同一の労働条件で当該申し込みを承諾したものとみなすこととなりました(改正労働契約法第18条)。

 ここでの重要なポイントは2つあります。

 1点目は、通算契約期間が5年を超えたという期間的な区切りのみで、有期労働契約を無期労働契約に強制的に転換させる権利(これを無期転換申込権といいます)を当該労働者に与えたという点です。

 2点目は、その権利を労働者が行使した場合には使用者は拒絶することはできないという点です。一定の条件を満たした有期労働契約者は、使用者に対し無期労働契約への転換を申し出れば、使用者の意向にかかわりなく無期契約に転換することができるということです。

 

3 実務上の主な留意点

 

  (1) 通算契約期間5年の起算日

  改正労働契約法第18条の規定は、改正法施行日である2013年4月1日以降の日を契約期間の初日とする有期労働契約から適用し、改正法施行日前の有期労働契約は通算契約期間に算入しません(改正法附則第2項)。

   そのため、有期労働契約を締結している者で、契約を更新していて2013年4月1日時点ですでに通算契約期間が5年を経過している場合であっても、2013年4月1日時点で無期転換申込権は発生しないことになります。

 

  (2) 介護休業などの期間の計算

  通算契約期間は、労働契約の存続期間で計算します。

   したがって、介護休業などで実際に勤務していない期間も、通算契約期間には算入されることになります。

 

  (3) 労働者による申込

   無期労働契約に転換されるためには、その労働者が無期転換申込権を行使する必要があります(改正労働契約法第18条)。

 行使期間は、「当該契約期間中に通算契約期間が5年を超えることとなる有期労働契約の契約期間の初日から当該有期労働契約の契約期間が満了する日まで」(改正通達)です。

   例えば、2013年6月1日に2年間の期間の定めのある契約した労働者が3回更新した場合を考えてみましょう。3回目の更新後の2018年6月1日時点で、通算契約期間が5年を超えることになります。この場合、3回目の更新をした有期契約の初日である2017年6月1日から同契約の終了日である2019年5月31日までに無期転換申込権を行使しなければならないことになります。

   なお、使用者は、労働者に対しこの無期転換申込権をあらかじめ放棄させることはできません(改正通達)。使用者の皆様、ご注意ください。

 

  (4) 無期労働契約転換後の労働条件

    契約期間を除き、労働条件は原則として有期労働契約締結時と同一になります。ただし、別段の定めがあればそれに従うことになります(改正労働契約法第18条第1項)。

   なお、この場合、労働契約法12条との関係にも注意してください。別段の定めをしていなかったとしても、就業規則の定め方次第では、労働条件が変更される可能性があります。

 

4 まとめ

  今回の改正は、使用者が無期契約への転換を拒絶できないという点で、きわめて重大な意義を有します。今後、有期労働契約を締結する場合には、今回の改正を念頭に置かれることをおすすめします。