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弁護士法人柴田・中川法律特許事務所

愛知県豊橋市・静岡県浜松市の弁護士11名・弁理士2名が所属する法律特許事務所

相続を放置しておくと…

2012/11/28 水曜日 17:48

【はじめに】
 自分の親には遺産なんてないからと、親が亡くなっても相続について何もしないで放置している方もおられると思います。
 今回は、事例をもとにそのような対応をした場合にどのような危険性があるかご説明したいと思います。

【事例】
 Aは、自分の親Bが亡くなったという連絡を親と同居していた長兄Cから受けました。しかし、Aは、長兄Cから親Bの遺産は何も存在しないと伝えられており、生前、親Bから事業を行っていたとか、借金をしているなどといった話を聞いたこともなかったため、相続放棄や限定承認、遺産分割等何もせずに放置していました。それから2年たったある日、金融業者Dから親Bの借金の返済を請求され、親Bに莫大な借金があったことが分かりました。
 この場合、Aは遺産を何も受け取っていなかったのに親Bの借金を相続して、借金を背負うことになってしまうのでしょうか。

【前提】
 Aは、相続人であるにも拘わらず、相続放棄や限定承認を行いませんでした。民法では、相続人が「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3箇月以内に相続放棄や限定承認(以下、相続放棄等と略称します。)をしなかった場合には、相続を単純承認したものとみなすと規定されています(921条2号、915条1項)。相続を単純承認すると、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産である借金も全て相続したことになります。
 つまり、相続について一定期間何もせずに放置していると、何もしていないにもかかわらず、自動的に借金等も含めた遺産を相続したことになってしまうのです。
 相続人が「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、相続人が①被相続人が死亡したことと②自分が相続する資格を持つことの2つを知った時と原則的には考えられています。
 そうすると、Aは、長兄Cから連絡を受けた時点で①親Bが死亡したことを知り、②自分が親Bの子供であり遺産を相続する資格を持っていることを知っていたのですから、「自己のために相続の開始があったことを知った」ことになり、それから3箇月はおろか2年間にわたり、相続放棄や限定承認をしなかったために、親Bの相続を単純承認したことになり、借金を背負うことになるのでしょうか。

【裁判例】
 この点について最高裁判所昭和59年4月27日判決は、❶相続放棄等をしなかったのが、遺産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、❷このように信じたことに相当な理由がある場合には、相続人が遺産の全部もしくは一部の存在を認識したときまたは通常これを認識可能であった時までは「自己のために相続の開始があったことを知った」とはいえないと判断しています。
 つまり、Aが❶および❷に該当する場合には、金融業者Dから親Bの借金の存在を伝えられた日から3箇月間は、相続を放棄することが可能となります。

【結論】
 Aは、❶親Bの遺産が全く存在しないと信じたため、相続放棄等をせず、❷Aは親Bと別居していたうえ、親Bや同居していた長兄Cから親Bに財産や借金があるといった話を聞いたこともなかったわけですから、親Bの遺産が全く存在しないと信じたことに相当の理由があるといえ、❶および❷に該当するといえます。
 したがって、Aは、金融業者Dから親Bの借金の存在を伝えられた日から3箇月以内に相続放棄等をして親Bの借金を免れることが可能となります。
 ただし、金融業者Dから親Bの借金の存在を伝えられた日から3箇月がすでに経過してしまっていた場合には、Aは、相続放棄等することができず、借金を背負うことになってしまいます。

【おわりに】
 今回は、遺産が存在しないと信じたことに相当の理由がある事例でしたので、相続放棄は可能でしたが、借金の存在を容易に調査し、発見することが可能であった場合には、相当の理由がないとして相続放棄が認められず、借金を背負うことにもなりかねません。
 また、今回の事例とは異なりますが、Aが、親Bに遺産が存在していることを知っていたが、長兄Cが全て遺産を相続するので自身には関係ないと相続を放置していた場合に、相続放棄が認められるかは、裁判所においても結論が分かれているところです。
 今回説明したように、相続を放置しておくことで思いもよらぬトラブルに巻き込まれる可能性がありますので、身近な方が亡くなって相続が発生した場合には、後々のトラブルを防ぐためにも、一度、お近くの法律事務所にご相談されることをお勧めします。

解雇について

2011/7/4 月曜日 15:08

 解雇とは、会社などの使用者からの一方的な意思表示による労働契約の解消をいいます。

 したがって、退職願を提出した場合のように、労働者の側から退職を申し出た場合は、解雇ではないということになります。

 解雇のうち、労働者側が問題を起こし、その懲戒処分として行われるものを懲戒解雇といい、それ以外のものを普通解雇といいます。

 解雇は、労働者に大きな不利益を与えるものであるので、法律等によって様々な規制がなされています。

 今回は、普通解雇の場合を念頭に置きながら、その中のいくつかについてご説明したいと思います。

 

【解雇予告】

 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、原則として、少なくとも30日前にその予告をするか、解雇予告手当として、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない(労働基準法20条1項)とされています。

 なお、解雇の予告が30日前より遅れた場合には、その遅れた期間分の平均賃金を支払うこととなっています(同条2項)。

 解雇予告あるいは解雇予告手当の支払いがされずに解雇されてしまった場合、解雇は無効となるのでしょうか?

 裁判例では、使用者が即時の解雇に固執しない限り、解雇の通知後30日が経過するか、解雇予告手当が支払われた時点で解雇の効果が発生するとされています。

 上記裁判例によると、使用者に即時解雇され、その有効性を争っていた場合、30日が経過すると、使用者が即時解雇にこだわらない限り、解雇は有効となり、労働者は30日分の賃金を請求できるだけということになります。

 

【解雇事由について】

 10人以上の労働者を使用する使用者は、退職事由を就業規則に記載しなければなりません(労働基準法89条3号)。

 仮に、就業規則に定められていない事由に基づいて解雇がなされた場合、裁判において、解雇は無効と判断される場合が多いようです。

 ただし、一般的に、就業規則には、解雇事由として「その他前各号に準ずるやむを得ない事情があったとき」という包括的な規定が置かれているため、就業規則に定められていない事由であると容易に判断できる場合は少ないと思われます。

 

【解雇が制限される時期】

 使用者は、一定の時期は、労働者を解雇することができません。

 仕事をしていて負傷したり、病気になったりした場合における休業期間およびその後の30日間、産休期間およびその後の30日間は解雇をすることができないとされています(労働基準法19条1項)。

 

【解雇が無効となる場合】

 法律によって、一定の場合には、使用者が解雇を行う権利を濫用したとして解雇が無効となるとされています。

 その場合とは、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合です(労働契約法16条)。

 

【整理解雇の場合の判断要素】

 例えば、使用者の経営不振による整理解雇、いわゆるリストラによる解雇の場合には、労働者側に直接の原因がないことから、労働者側に原因があってなされる普通解雇に比べて、裁判例において、より厳しい制約が課せられています。具体的には、下記の要素を考慮して、解雇が無効となるかが判断されています。

① 人員削減の必要性

  まず、経営上の理由により、人員削減をする必要性があることが必要とされています。

②  解雇回避努力

  次に、人員削減の必要性があったとしても、解雇を行う前に、例えば、希望退職者を募るなど、解雇以外の方法による人員削減を行い、解雇を回避するよう努力する必要があります。

③  人選の合理性

  解雇以外の方法によっては、人員を削減できず、解雇を行わざるを得ないとしても、解雇する労働者の人選は合理的なものである必要があります。

④  手続の妥当性

  使用者は、労働組合や労働者に対して、整理解雇の必要性やその時期、規模、方法について納得を得るために、説明を行い、誠意をもって協議をしなければなりません。

 裁判例においては、上記要素のうち、1つでも欠けていると解雇が無効と判断される場合が多いようです。

 

 

 今回説明した以外にも、解雇に関する規制は多々存在し、裁判において、解雇の有効性はさまざまな事情を考慮して判断されています。

 特に、懲戒解雇については、規律違反に対する制裁としてなされるもので、懲戒解雇されたことが明らかとなると再就職の障害となるので、普通解雇よりも厳しい規制がなされます。

 解雇について詳しいことをお知りになりたい方は、お近くの法律事務所にご相談されることをお勧めします。