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弁護士法人柴田・中川法律特許事務所

愛知県豊橋市・静岡県浜松市の弁護士11名・弁理士2名が所属する法律特許事務所

マルチ商法

2012/10/31 水曜日 13:07

【質 問】
 化粧品販売のビジネスをやっている友人から、化粧品の販売員にならないかと勧められ、説明を受けました。それによると、加盟金を支払って会員になって、化粧品を買い受けて販売すればマージンがもらえ、また、会員を増やすと地位が上がりマージンの額も増えるとのことでした。あまりにも強引に誘われたので、私は販売組織に加入することとなり、とりあえず加盟金と化粧品セット一式の仕入れ代金を支払い、会員になりました。
 しかし、冷静になって考えると、販売をしていく自信もないので、解約をしたいのですが、どうしたらよいでしょうか。

【マルチ商法】
 マルチ商法とは、販売組織の会員がほかの者を組織に加盟させ、その会員がさらにほかの者を勧誘するというように次々と会員を増やして、組織をネズミ算式に自己増殖させ、新規会員からあがるバックマージンを順次上位会員・幹部に配当することによって、多数の下部会員の犠牲の下にごく少数の幹部会員が大儲けする仕組みを持った商法です。
 この商法で扱われる商品としては、化粧品のほかに、アクセサリー、浄水器、健康食品など様々なものがあります。

【マルチ商法の問題性】
 マルチ商法は、ねずみ算式に会員を増加させ組織を拡大据えることによって会員全員が利益を享受できるという形態をとりますが、現実に組織を拡大し続けるのは不可能なことは明らかです(1人が4人ずつ勧誘を続けていくと15代目には日本の人口を超えてしまいます。) つまり、こうしたマルチ組織は早晩続かなくなって破綻してしまうことが間違いないと言えます。
それだけではなく、マルチ商法においては、商品が売れそうもないものであったり、勧誘した人(友人や近所の人であることが多い)との人間関係がうまくいかなくなるという危険もあり、結局加盟金や再販売のために購入した商品代金を支払っただけということになって、損失を被ることになることが多いのです。

【マルチ商法の規制】
 少なくとも法律の規定上は、マルチ商法そのものを違法としているわけではありません。しかし、特定商取引に関する法律(以下、「特定商取引法」と言います。)が、「連鎖販売取引」という範疇をもうけて、マルチ商法について、事実の不告知・不実告知の禁止、威迫して困惑させる行為の禁止、断定的判断の提供の禁止、などいくつかの禁止行為を定め、これに違反した場合には行政処分や刑事罰を科すこととしました。また、一定の場合には契約取消権や中途解約権なども認められています。

【クーリング・オフ】
 さて、ご質問の解決方法ですが、契約を白紙に戻すためには、クーリング・オフ制度を利用することが最も簡便です。
 特定商取引法は、連鎖販売取引につき、20日間(初日を算入する)のクーリング・オフ制度を認めていますので(特定商取引法40条)、まずはこれによって契約を白紙に戻すことを検討すべきです。
 なお、再販売型の連鎖販売取引(加入者が、いったん商品を購入した上、その商品を会の加入者ないし一般消費者に売る形式のもの)に関しては、契約書面の受領日と商品の引渡日を比較して、遅い方の日が起算日になります(特定商取引法40条1項かっこ書き)。
 本ケースのような場合には、まず、このクーリング・オフが行使できる期間内か否かを確認し、期間内であれば、直ちに、クーリング・オフ通知を発送すべきです。

【消費者契約法との関係】
 消費者契約法は、「事業として又は事業のために契約の当事者となる場合」は、適用がないことになり、マルチ商法の場合、加入者は形式的には事業者に該当し、消費者契約法の適用がないとされる可能性があります。
 しかし、当該契約の具体的事情によっては、一定の場合には、消費者契約法が適用される場合があると考えられています。
 そして、消費者契約法は、事業者によって、「不実の告知による誤認」、「断定的判断の提供による誤認」、「不利益事実の不告知による誤認」、「不退去による困惑」により、消費者が消費者契約に申し込みをしたときには、当該消費者がこれを取り消すことが出来ると規定しています。
 なお、消費者契約法で認められる取消については、追認をすることが出来るときから6ヶ月、契約締結の時から5年という期間制限があります。

【おわりに】
 近年、「出資をすれば、投資や事業で運用して月○パーセントの運用益を配当する」などとして出資を募る商法が増えています。その中でも、「新たな出資者の勧誘に成功した場合は、通常の配当に加えて、別途紹介料がもらえる」とマルチ商法的な勧誘をし、出資者を増やしていくという被害事例が目立っています。
 これまで紹介してきたマルチ商法とは、適用法令等に違いがあるため、具体的な事例に即して適用法令等を考える必要があります。
 まずは、マルチ商法のような勧誘には、絶対に耳を貸さないのが第1ですが、万一に巻き込まれてしまった場合には、弁護士にご相談されることをお勧めします。
                                                                                                                

ペットの飼い主の責任

2011/12/8 木曜日 18:33

【はじめに】
 少子高齢化や単身世帯の増加、社会的ストレスの増大などを背景に、犬・ネコの飼育総数は年々増加傾向にあるようです。
 動物を飼うことは、動物の命を預かることであり、飼い主は、動物が健康で快適に暮らせるようにするとともに、社会や近隣に迷惑を及ぼさないようにする責任があります。
 そこで、今回は、動物の飼い主の法律上の責任について、少しだけお話ししたいと思います。

 

【質 問】
 先日、自転車に乗って道路を運転中、急に飛び出してきた犬に驚き、犬との衝突を避けようとして転倒してしまいました。
 転倒したことにより、自転車が壊れ、私自身もケガをしてしまいました。
 この場合、犬の飼い主に責任を問うことは出来ますか?

 

【民法第718条】
 私生活の基本を定めた民法には、「動物の占有者等の責任」を定めた条文があります。

  民法第718条
   1 動物の占有者は、その動物が他人に与えた損害を賠償する責任を負う。
     ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもって管理したときは、この限りでない。
   2 占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。

 つまり、動物の飼い主は、飼っている動物が他人に損害を与えたときは、それによって生じた損害を賠償しなくてはならないのが原則だけれども、「相当の注意」をもって管理をしていたということを立証した場合には、責任を免れるということです。

 
【相当の注意】
 では、飼い主が、「相当の注意」をもって管理をしていたか否かはどのように判断されるのでしょうか。

 「相当の注意」とは、動物の種類および性質に従い、通常払うべき程度の注意義務を意味し、異常な事態に対処しうべき程度の注意義務まで課したものではありません。
 そして、その具体的な注意義務の内容は、個々的な事案に即して具体的に判断されるのですが、一般的には、①動物種類・雌雄・年令、②動物の性質・性癖・病気、③動物の加害歴、④占有者につき、その職業・保管に対する熟練度、動物の馴致の程度、加害時における措置態度など、⑤被害者につき、警戒心の有無・被害誘発の有無・被害時の状況などの諸点が考慮されています。

 もっとも、最近の裁判例では、「相当の注意」をもって管理していたとして、飼い主に落ち度がなかったとされるケースはほとんどないようです。そのため、事実上、無過失責任に近い、動物の管理者にとって、とても厳しい規定となっているようです。
 動物の管理者にとって厳しい判断がされることが多い理由としては、動物による事故が続発している昨今、動物による事故を起こさないように万全の手段をとることが、善良な飼い主の責任であると考えられるようになったことが挙げられます。

 

【被害者側に過失がある場合】
 ただし、被害者側にも過失がある場合があります。ご質問のケースで言えば、被害者自身にも脇見運転や速度違反等があったという場合です。
 被害者側にも過失があった場合には、被害者側の過失が考慮されて、損害賠償額が、被害者側の過失割合に応じて減額されることとなります。

 

【因果関係】
 では、ご質問とは異なり、『背後から犬に吠えられために驚いて転倒した』という場合には、犬の飼い主は転倒により発生した損害について責任を負うのでしょうか。
 これは、法律的には、因果関係の問題とされています。

 「犬が吠えただけなのだから、飼い主に責任はない」から因果関係は認められないと簡単に判断されるわけではなく、因果関係が認められるか否かについて、個別具体的な詳細な事情を考慮して判断されます。
 そのため、『犬が、単に1回、原告に対し、吠えたというにすぎず、原告に飛びかかろうとしたことはないと認定した上で、「本件犬が原告に向かって吠えたことは、原告に対する一種の有形力の行使であるといわざるを得ず、犬の吠え声により驚愕し、転倒することは、通常あり得ないわけではないから、本件犬が吠えたことと原告の転倒との間には相当因果関係がある』(横浜地方裁判所平成13年1月23日判決)として飼い主の責任を認めた裁判例も存在します。

 

【おわりに】

 昨今のペットブームを反映してか、ペットを巡るトラブルが跡を絶ちません。
 動物を飼っている人はもちろん、飼っていない人も、いつ、トラブルに巻き込まれるか分かりません。
 トラブルに巻き込まれた際、話し合いで解決できないようであれば、お近くの弁護士にご相談されることをお勧めします。

親権者の指定について

2011/6/6 月曜日 14:20

【はじめに】
 日本における離婚件数は、厚生労働省の発表によると、平成20年には、25万1000件であり、そのうち、協議離婚は、87.8パーセントとなっているそうです。
 そうだとすれば、残りの12.2パーセントは、裁判所が関与して成立する離婚(調停離婚、審判離婚、和解離婚、認諾離婚及び判決離婚の5種)であるということです。

 協議離婚が出来ない理由は、各夫婦ごとに様々な事情があると思いますが、未成年の子の親権者について争いがある場合は、協議離婚は出来ません。
 なぜなら、父母の婚姻中、未成年の子は父母の共同親権に服していますが(民法818条1項、3項)、父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならないからです(民法819条1項)。
 そこで、未成年の子の親権について争いがある場合には、家庭裁判所において、親権者を指定することとなりますが、その場合の判断基準がどのようなものなのかについて、簡単にお話しします。

 
【親権者の指定の判断基準は?】
 では、親権者の指定は、どのような観点から行われるのかについてですが、親権者は、父母のいずれを親権者とするかが子の福祉に適うかという観点から、諸事情を比較考慮して、総合的に判断されます。
 総合考慮の要素については、父母側の事情として、監護能力(年齢・性格〔異常性のチェック〕・教養・健康状態)、精神的・経済的環境(資産・収入・職業・住居・生活態度)、居住環境、教育環境、子に対する愛情の度合い、従来の監護状況、実家の資産、親族の援助等が問題とされており、子の側の事情として、年齢、性別、心身の発育状況、環境への適応状況、環境の変化の適応性、子の意思、父母および親族との情緒的結びつきなどが問題とされています。

 そして、裁判例において、上記諸事情を比較考慮する際、次のような基準が指摘されることがあります。 
  ① 監護の実績の尊重
     子の健全な成長のためには親と子の不断の精神的結びつきが重要であって、養育監護者の変更は子の心理的不安定をもたらすことを理由に、現実に子を養育監護する者が優先されるということです。
     なお、監護の実績とは、子の出生児から現在までの生育暦を全体的にみて判断されることとなります。
  ② 子の意思の尊重
     人事訴訟法32条4項の条文上、「子が15歳以上の場合は、家庭裁判所はその子の陳述を聴かなければならない」という義務規定があるので、一つのメルクマールになります。
     裁判例では、おおむね10歳前後以上であれば意思を表明する能力に問題がないとされています。
     ただし、子の意思がいくらはっきりしていても、それに決定的に縛られるわけありません。
  ③ 母親(母性)の優先
     乳幼児については、特段の事情がない限り、母親(あるいは母親的な役割という意味で母性)の監護養育にゆだねることが子の福祉に合致するという考え方です。
     従来は、この考え方を重視する裁判例が多かったと言えますが、最近では、子の監護養育における父母の役割が変化していることもあり、徐々にこの傾向が弱まっているのではないかという指摘もあります。
  ④ 面接交渉の許容性
     子に他方の親との面接交渉を認めるなどして、子に相手の存在を肯定的に伝えることが出来るかという点も、親権者として適任であることの一つの判断材料になります。
     父母双方との交流ができる監護環境を整えて、子の情緒の安定、心身の健全な発達を図ることが望ましいとの考えからです。
  ⑤ きょうだい不分離
     幼児期に、きょうだいが生活を共にすることによって互いに得る体験は人格形成上重要であることや両親の離婚によって子は心理的苦痛を受けますが、さらにきょうだいを分離することは子に二重の離別を強    いることになるということで、できる限り親権者指定にあたって兄弟を分けないことが判断材料になってきます。
    もっとも、子の年齢が上がってくれば、この観点はあまり重視されない傾向にあります。
  ⑥ 奪取の違法性
    上記①~⑤の基準は、いずれも多くの裁判例で採用されており、相互に補強・補完して使用される場合もあります。
    しかし、事案によっては、相互に衝突する場合もあり、その場合には、いずれかの基準が優先されて使用されており、裁判例上は、上記①の監護の実績の尊重は重要な基準として位置づけられています。
    そのため、現実に子を養育監護していない親は、子を自己の監護の下におこうと考え、子を奪う、また、取り返すといった、子の奪い合いという実力行使が招かれてしまいます。
    このような事態は、子の福祉の観点から望ましくはありません。
    そこで、子を奪取した行為に違法性がある場合には、奪取者の親権適格に問題があり、奪取した親の下で安定した生活を送るようになっても、それは奪取の結果であって追認されないとした裁判例があります。
    もっとも、⑥奪取の違法性をどこまで重視するについては、裁判例もいろいろ分かれているというのが現状です。

  

 このように、上記①~⑥の基準は、絶対的な原則ではなく、まさしく、父母のいずれを親権者とするかが子の福祉に適うかという観点から、諸事情を比較考慮して、総合的に判断されているのです。

 

【おわりに】
  現在、離婚の主たる争点が子どもの親権である場合が少なくありません。
  子どもの親権についての判断は、ケース・バイ・ケースですので、自分のケースはどうなのか等疑問に思ったことがある方は、お近くの弁護士にご相談されることをお勧めします。
  
  なお、親権を取るため、子を奪い合うということが少なからず見受けられます。
  子の奪い合いという実力行使に出る親たちの思いはいろいろあると思われますが、板挟みとなる子どもたちの精神的、肉体的ストレスは計り知れません。
  親の一方あるいは双方が、子どもの福祉という観点から離れて、いたずらに相手方の非難・責任追及に固執し、そのために子どもの生活が安定しないことは決して望ましいことではありません。
  もし、別居中、現実に監護養育をしていない親に子どもを連れ去られた場合、実力行使に出るのではなく、速やかにお近くの弁護士にご相談され、これ以上、子どもたちを傷つけないように、冷静な対応をしていただければと思います。

DV防止法の保護命令について

2010/12/28 火曜日 13:50

【はじめに】
 配偶者からの暴力に悩み、離婚をしたいのに、配偶者からの更なる暴力を恐れて離婚話を切り出せないという方が存外いらっしゃるのではないかと思います。
 このような場合、実家、親族や友人宅に一時的に避難をするなどして離婚話を進めるという方法等も考えられますが、DV防止法の保護命令を利用し、離婚話を進めるということも考えられます。
 そこで、今回は、DV防止法の保護命令について簡単にお話ししたいと思います。

 

【DV防止法とは】
 DV防止法とは、正式名称を「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」と言います(以下、単に「DV防止法」と言います)。
 DV防止法は、平成13年10月13日に施行され、平成16年に第1回の改正が,平成19年に第2回の改正が行われ,平成19年の改正については,平成20年1月11日に施行されました。
 DV防止法は、配偶者からの暴力を防止し、被害者を保護する法律です。被害に遭っている人は配偶者暴力相談支援センターや警察に相談、援助、保護を求めたり、裁判所に保護命令の申立てをすることができます。
 

【保護命令の概要】
 保護命令は、「配偶者からの暴力」のうち、一定の要件を満たす場合に、被害者からの申立により裁判所が接近禁止命令や退去命令などの保護命令を発する制度です。
 そして、保護命令に違反した者は、刑事罰(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)の制裁が加えられることになります。

 

【保護命令の種類】
○ 接近禁止命令
  6か月間,被害者の身辺につきまとい,又はその通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずる保護命令
○ 退去命令
  2か月間,被害者と共に生活の本拠としている住居から退去すること及びその住居の付近をはいかいしてはならないことを命ずる保護命令
○ 配偶者への電話等禁止命令
  被害者への接近禁止命令の期間中,次に掲げるいずれの行為も禁止する保護命令
    1.面会の要求
    2.行動を監視していると思わせるような事項を告げ,又は知り得る状態に置くこと
    3.著しく粗野又は乱暴な言動
    4.無言電話,又は緊急やむを得ない場合を除き,連続して,電話をかけ,ファクシミリ装置を用いて送信し,若しくは電子メールを送信すること
    5.緊急やむを得ない場合を除き,午後10時から午前6時までの間に,電話をかけ,ファクシミリ装置を用いて送信し,又は電子メールを送信すること
    6.汚物,動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し,又は知り得る状態に置くこと
    7.名誉を害する事項を告げ,又は知り得る状態に置くこと
    8.性的羞恥心を害する事項を告げ,若しくは知り得る状態に置き,又は性的羞恥心を害する文書,図画その他の物を送付し,若しくは知り得る状態に置くこと
○ 被害者の子への接近禁止命令
   被害者への接近禁止命令の期間中,被害者の同居している子の身辺につきまとい,又はその通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずる保護命令
○ 被害者の親族等への接近禁止命令
   被害者への接近禁止命令の期間中,被害者の親族その他被害者と社会生活において密接な関係を有する者の身辺につきまとい,又はその通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずる保護命令

 

【保護命令の要件】
(1)配偶者
   DV防止法上の「配偶者」は、婚姻の届出をした法律的な婚姻関係にある者の他、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むとされています。
   したがって、単なる交際相手や内縁関係にはない同棲相手からの暴力は、「配偶者」からの暴力には該当しないこととなります。
(2)婚姻中の暴力・脅迫
   DV防止法上の「配偶者からの暴力」とは、配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。)又は、これに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいうとされています。
(3)暴力による重大な危害のおそれ
   「更なる身体に対する暴力により、生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きい」ということが要件とされています。
(4)配偶者暴力支援センター・警察への相談等
      申立書には、事前に配偶者暴力支援センターの職員又は警察職員に対し相談し、又は援助若しくは保護を求めた事実の有無を記載することとなっています。
  もっとも、相談等を行っていない場合には、公証人の面前で宣誓の上、認証を受けた書面(以下「宣誓供述書」と言います。)を申立書に添付することとなります。

 

   ひとまず、保護命令の制度について簡単にお話ししましたが、ここではお話しきれなかったことも多くありますので、配偶者からの暴力に悩んでおり詳しいことをお知りになりたい場合には、お近くの法律事務所にご相談されてみてはいかがでしょうか。

消滅時効とは?

2010/8/1 日曜日 22:22

 今年の4月27日、「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」により、殺人罪などの公訴時効が廃止されました。皆さんもニュースなどで耳にされたのではないでしょうか。
 公訴時効とは、犯罪が行われたとしても、法律の定める期間が経過すれば、犯人を処罰することが出来なくなるものです。

 この「時効」というのは、刑事事件のみならず、民事事件においても問題となります。
 そこで、今回は、民事事件における時効、とりわけ、消滅時効について、具体的な質問に答える形で簡単に説明をしたいと思います。

 

【質 問】
 先日、タンスの中を整理していたら、8年前の借用証書が見つかりました。
 その借用証書を見て、私は、8年前にAさんにお金を貸して、貸して1年ほど経って以降、何度も返済を求めたのに、結局1円も返してもらえないままであったことを思い出しました。
 そこで、私は、Aさんに、返済を求めたところ、「確かにこの借用証書は自分が差し入れたものだが、時効だから払わない。」と言って支払ってくれません。
 私は、Aさんからお金を返してもらえないのでしょうか。
 なお、私はサラリーマンであり、これまでAさんにしかお金を貸したことはありません。

 

【時効とは】
 時効とは、一定の事実状態(例えば、ある人が所有者であるような事実状態、ある人が債務を負担していないような事実状態)が継続した場合に、それが真実の権利関係に合致するものかどうか(本当に所有者であるかどうか、本当に債務がないかどうか)を問わずに、その事実状態を尊重して、それをそのまま権利関係として認める制度です。
 そして、ここでは、消滅時効(一定の期間にわたり、権利を行使しないとその権利が消滅してしまう制度)が問題となっています。

 なお、この消滅時効というのは、一定期間の経過により当然に権利が消滅してしまうのではなく、消滅時効により利益を受ける人(ご質問の場合では、お金を返さなくてもよくなるという利益を受けるAさん)が、「消滅時効を主張します。」という意思を表示して初めてその効果が生じます。
 つまり、法律は、「時効を理由に借金を踏み倒したなどと言われては男の顔にかかる」、「借りたお金は何年かかっても返す」という人の良心を尊重しようという考慮から、時効を主張しない自由を認めています。

 

【時効期間】
 さて、それでは、どれだけの期間が経過すれば、時効は完成するのでしょうか。
 時効期間は法律で定められており、民事上の債権は原則として10年(民法167条1項)、商事上の債権は原則として5年(商法522条)とされています。
 また、特に短い時効期間が定められているものもあり、請負人の工事に関する債権、約束手形の振出人に対する請求権などは3年、生産者、卸売商人、小売商人の売掛金代金債権などは2年、ホテルなどの宿泊代金、料理店の飲食代金などは1年で時効にかかると言われています。

 

【貸金債権の時効】
 ご質問の場合、あなたの貸付債権が「商事上の債権か民事上の債権か」で結論は異なります。
 そして、貸付債権が商事上の債権か否かは、「Aさんが商売のためにお金を借りたか否か」で判断されます。
(1)Aさんが、そもそも商売をやっていない場合
  Aさんが、商売をやっていない場合は、あなたの貸金債権は民事上の債権ですので10年で消滅時効期間を経過するため、いくらAさんが時効を主張しても、未だ時効期間が経過していないので、あなたはAさんにお金を返すよう求めることが出来ます。

(2)Aさんが商売をやっている場合
  Aさんが、商売をやっておりその設備資金や運転資金として、あなたからお金を借りた場合、商法3条1項により、あなたの貸付債権は商事上の債権となります。したがって、5年で消滅時効を経過しますので、Aさんが時効を主張した以上、お金を返すよう求めることは出来なくなってしまいます。
  もっとも、Aさんが商売をやっていても、商売とは無関係にお金を借りた場合(例えば、子どもの結婚費用のためにお金を借りた場合)には、あなたの貸付債権は商事上の債権ではなく民事上の債権となりますので、上記(1)と同じ結論となります。