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弁護士法人柴田・中川法律特許事務所

愛知県豊橋市・静岡県浜松市の弁護士11名・弁理士2名が所属する法律特許事務所

老人の介護事故

2013/6/12 水曜日 10:54

1 はじめに
 我が国は、高齢化、それも近年は超高齢化の時代に突入しており、特別養護 老人ホーム、デイサービス施設その他の老人施設の入所者・利用者が著しく増加しています。
 これに比例するかのように、これら施設の内外において、入所者・利用者が関係する転倒、転落、誤嚥等の介護事故が増加する傾向にあります。
 介護事故が発生すると、その内容・程度によっては、介護事業者については、損害賠償責任または行政的責任(介護保険指定業者としての指定の取消等)を、介護担当職員については、損害賠償責任または刑事責任(業務上過失致死傷罪等)を問われることがあり、介護事業者および介護担当職 員にとっては、重大な問題を抱える危険性があります。
 そこで、今回は、介護事故の中でも頻度の高い施設内での転倒事故について、裁判例に即して考えてみることとします。
2 事故の内容
 社会福祉法人が運営するデイサービス施設の職員は、85歳の女性(要介護 度2、歩行には杖が必要)が、帰宅するに際しトイレに行くに当り、トイレまでは同行したものの、トイレ内への同行を拒否されたため、女性一人で杖を使用して便器まで歩かせたところ、杖が滑って転倒し、右大腿骨けい部内側骨折の傷害を負い、後遺障害が残り要介護度4となったというものです。
3 裁判所の判断
 裁判では、①施設に安全配慮義務(入所者・利用者が危険な状態に陥らないような配慮をするべき義務)違反があるか否か、②女性に過失があるか否か、あるとすればその割合が問題となっています。
(1) ①について
 裁判所は、女性が使用したトイレは、入口から便器まで距離が約1.8メートルあり、しかも、入口から便器までの壁には手摺がないため、女性が一人で杖を使用して歩行すれば、転倒することは十分に予想することができたのであるから、職員は、たとえ女性からトイレ内への同行を拒否されたとしても女性を一人で便器に向かわせるべきではなく、女性を説得して便器までの歩行を介護する義務を負担しており、この義務を尽くさず、女性を一人で歩行させた点に安全配慮義務違反があるとしました。
(2) ②について
 裁判所は、女性は、職員に対しトイレ内への同行を求めず、かえって同行を拒否してトイレのドアを閉めて一人で便器に向って歩いて誤って転倒したのであるから、女性にも事故の発生について過失があり、その割合は3割であるとしました。
4 本件から学ぶべき点
 私は、本件判決は、結論、理由ともに相当であると考えています。
 そこで、本件から、介護事業者および老人施設の入所者・利用者ともに学ぶべき点を指摘すると次のとおりであると考えます。
 まず、介護事業者および介護担当職員は、仮に、入所者・利用者が介護を拒否した場合であっても、安易に従ってはならず、入所者・利用者に対し、介護を受けないことによる危険性とそれを回避するために介護が必要であることを専門的観点から十分に説明して、介護を受けるよう説得すべきであるということです。
 次に、入所者・利用者も素直に介護担当職員の介護を受けることが自身の安全のためにも良いと考えるべきであるということです。
                                                                     以 上

知的障害者と成年後見制度

2012/3/29 木曜日 17:02

1 人は、満20歳に達するまでは、未成年者として父母の親権に服しますので、たとえ   知的障害があったとしても格別の措置は必要とされません。
 しかし、満20歳に達したのちは、どれほど重い知的障害があったとしても、父母の親権が消滅するため、知的障害者本人の身上監護と財産管理をどのようにするかが大きな問題として登場することとなります。
 もっとも、父母またはそのいずれかが心身ともに健康である間は、理論は別として現実には、父母またはそのいずれかが知的障害者本人のために身上監護と財産管理をしており、特殊な場合(例えば、父母またはそのいずれかが知的障害者本人を虐待したり、知的障害者本人の財産を不当に減少させるような場合)を除けば、さほど問題があるとは思われません。
 問題は、高齢または病気などにより、父母が知的障害者本人のために身上監護や財産管理を行うことが不可能または困難となったときです。
 そのための制度としては、ご承知のとおり成年後見があります。成年後見には法定後見と任意後見とがありますが、重い知的障害者の場合は、自身で任意後見契約を締結する能力を有しないと考えられますので、ここでは後者は割愛して前者について説明をすることとします。
2 知的障害者の成年後見の特徴は、①後見期間が長くなりがちである点、②知的障害者本人の資力が乏しい場合が多い点にあり、そのため高齢者の場合に比して、成年後見人を誰にすべきかがより深刻な問題となります。その理由は、主として、①の点は成年後見人の負担に、②の点は成年後見人の報酬、費用等に関係するからです。 
    私は、知的障害者の成年後見人は、原則として親等の近い親族(父母または兄弟姉妹)が望ましいと考えています。何よりも知的障害者本人に対する情愛が深く、その特性を十分に理解していると思われるからです。
 しかし、親族(例えば父母)が高齢または病気などの理由により成年後見人の職務を行うことができない場合とか、親族(例えば兄弟姉妹)が成年後見人を引き受けなかったり、成年後見人の職務を行わせることに問題があるような場合には、親族以外の第三者に成年後見人を引き受けてもらうほかありません。
 第三者については、自然人の場合は弁護士または司法書士が選任される場合も多く、法人の場合はNPO法人とか社会福祉法人が選任される例があります。家庭裁判所は、それぞれに理由または事情があって選任したものと思われますが、成年後見に関して、紛争性がない場合に法律家である弁護士が必要か否か、紛争性がある場合に法律家とは言えない司法書士が適任か否か、疑問なしとしません。また、法人については、責任の所在が明らかではなく成年後見人として適当か否か、これまた疑義があります。
3 最近得た情報によれば、いくつかの知的障害者施設では、施設を運営する社会福祉法人が施設利用者(入所者および通所者) の成年後見人となっており、その場合には、成年被後見人である施設利用者と成年後見人である社会福祉法人との間で利益が相反するおそれがあることから、その地域の社会福祉協議会を後見監督人にして問題を克服しようとしているようです。
 確かに、社会福祉法人であることから、成年後見事務を長期にわたって行うことが可能であること、知的障害者本人が利用している施設を運営していることから、その特性についての理解とか配慮を期待することができること、成年後見人の報酬とか費用を低く押さえることが可能であることなどの利点があり、私も基本的な方向としては必ずしも反対ではありません。
    しかし、私は、社会福祉協議会を後見監督人としている点については、残念ながら後見監督が単なる形式に堕するおそれが極めて高く、結局のところ利益相反の解決にはならないため、賛成することができないと考えています。なぜなら、率直に言えば、社会福祉協議会は、いわゆる天下りの地方公共団体の公務員などによって運営されていることが多く、適切かつ妥当な後見監督を行うことを期待することができないからです。
 私は、このような場合はもちろんのこと、その他の場合でも、後見監督人には弁護士を充てるのが相当であると考えています。
                                               以 上

元海上保安官に対する起訴猶予の違法性

2011/2/4 金曜日 16:25

1 東京地方検察庁は、神戸海上保安部所属の元海上保安官一色正春氏(以下、一色氏と略称)が、尖閣諸島沖において中国漁船(実態は、中国海軍の艦艇であるようであるが、ここでは敢えて問題にしないこととする。)が海上保安庁の巡視船二隻に体当りした場面を撮影した映像(以下、本件映像と表記)を、インターネットの動画サイトに投稿した行為(以下、本件行為と表記)につき、1月21日、「起訴猶予」とした(以下、本件処分と表記)。        

  東京地方検察庁は、公訴を提起せず「起訴猶予」とした理由として、海上保安庁による本件映像の管理が杜撰であったこと、一色氏の映像の入手は偶然的であったこと、一色氏の投稿は利益を目的とするものではなかったこと、一色氏は自ら名乗り出て海上 保安官を辞職したことなどを挙げている。       

  しかし、私は、本件行為に対しては、「嫌疑なし」として「不起訴」とすべきであり、本件処分は不相当であるにとどまらず違法であって許されないと考える。理由は以下のとおりである。

2 「起訴猶予」は、『犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。』と定めている刑事訴訟法第248条に基づく処分である。

  ところで、「起訴猶予」は、対象とされている行為が犯罪に該当することを前提としており、検察官は、対象とされている行為が犯罪に該当しないのであれば、「不起訴(嫌疑なし)」とすべきであり、対象とされている行為が犯罪に該当するか否か判然としないのであれば、「不起訴(嫌疑不十分)」とすべきである。      

  ここで問題としなければならないのは、本件処分が本件行為を国家公務員法第100条第1項(秘密を守る義務)に違反する犯罪であることを前提としている点である。

3 このため、本件行為が果たして国家公務員法第100条第1項に違反する犯罪であるか否かを検証する必要がある。

   国家公務員法第100条第1項は、『職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。(以下、省略)』と規定しているので、本件行為が同条項に違反する犯罪と言い得るためには、本件行為が同条項の要件をすべて充足しなければならないが、検討すべき唯一にして最大の要件は、本件映像が「秘密」に該当するか否かである。

4 「秘密」の意義に関しては、『非公知の事実であって、実質的にもそれを秘密として保護するに値するものをいう』(最高裁判所第1小法廷昭和53年5月31日判決)とされているので、本件行為が国家公務員法第100条第1項に違反するか否かは、本件映像が、①「非公知の事実」か否か、②「実質的に秘密として保護に値するもの」か否かを検討する必要があり、かつ、それを もって足りることとなる。

5 ①について
   新聞等の報道によれば、本件映像を含む中国漁船が海上保安庁の巡視船二隻に体当りした場面の全映像は、ある時期は海上保安庁の職員であれば誰でも見ることができる状態にあったということであり、また、本件映像の一部分は一部の国会議員(衆議院予算委員会理事ら)に開示され、これら国会議員はメディアに対して体当りの場面を図示するなどして解説していたのであるから、本件映像は、本件行為の時点においては既に公知の事実となっていたと言わざるを得ない。
   従って、本件映像は、前記①の要件を具備していないことは明らかである。

6 ②について
   本件映像は、中国漁船が海上保安庁の巡視船二隻に体当りした明白な犯罪行為を内容とするものであって、一方において、中国漁船船長の逮捕および勾留が合法かつ正当であることを証明し得る証拠であるとともに、他方において、海上保安庁の巡視船が中国漁船に衝突したとする中国当局の余りにも明白は虚偽の主張を、いとも簡単に粉砕することのできる証拠である。

   すなわち、本件映像は、公開することによって、我が国の正当性を国内外に示すことのできる唯一無二の材料にほかならず、積極的に公開すべきものであり、そもそも秘密としておくべき必要など全くなく、保護するに値しないものであると言わざるを得ない。

   従って、本件映像は、前記②の要件も具備していないことは明らかである。

7 以上から、本件映像は国家公務員法第100条第1項が規定する「秘密」に該当するものではないのであるから、一色氏の本件行為は、同条項に何ら違反せず、犯罪ではないことは明白であり、東京地方検察庁がなすべき処分は、「嫌疑なし」による不起訴であって、犯罪であることを前提とする「起訴猶予」としたのは、冒頭で述べたとおり、不相当であるのみならず違法である。

  東京地方検察庁の本件処分は、検察が、時の政府の意向に迎合して中立性を放棄して行った政治的判断と断ぜざるを得ない。

          
                                                                             以 上

法務大臣の死刑執行の命令

2010/8/31 火曜日 17:04

1 死刑制度を存続すべきか廃止すべきかについては、これまで大いに議論がなされてきたが、今後も活発な議論が展開されるものと思われる。 
  もっとも、今回は、この難解な問題ではなく、法務大臣の死刑執行の命令について私見を述べることとしたい。
2 千葉景子法務大臣は、過日、記者会見をして、死刑確定者2名について、死刑の執行を命令し執行がなされたことおよび自らその執行に立ち会ったことを明らかにした。
  新聞報道によれば、法務大臣自身が、刑場に臨み、死刑の執行に立ち会った事例は過去にはなかったとのことである。
  『死刑は、刑事施設内において、絞首して執行する。』(刑法第11条第1項)こととなっており、『 死刑は、検察官、検察事務官及び刑事施設の長又はその代理者の立会いの上、これを執行しなければならない。』(刑事訴訟法第477条第1項)とされ、『検察官又は刑事施設の長の許可を受けた者でなければ、刑場に入ることはできない。』(同条第2項)とされているところ、法務大臣は、裁判の執行を監督する職務を有する検察官を指揮監督することができる立場にあるのであるから(検察庁法第5条、第14条)、千葉景子法務大臣が、刑事施設内の刑場に臨み、死刑の執行に立ち会ったこと自体には格別の問題はない。
  また、新聞記事の中には、死刑廃止論者である千葉景子法務大臣が死刑の執行を命令したことを非難するものがあるが、ここでは敢えて問題にしないこととする。
3 私が問題とするのは、国会議員ではない法務大臣が死刑の執行を命令したことの是非である。
  確かに、『死刑の執行は、法務大臣の命令による。』(刑事訴訟法第475条第1項)とされており、国務大臣は必ずしも国会議員である必要はないこととなっている(憲法第68条第1条)。しかし千葉景子法務大臣は、かつては参議院議員であったが、先の参議院議員選挙において落選し、前記死刑の執行を命令した時点においては国会議員ではなくなっていた。
  一般の刑の執行を検察官が指揮する(刑事訴訟法第472条)のとは異なり、死刑の執行を法務大臣の命令にかからしめた理由は、死刑が人の生命を奪う極限の刑罰であり、一旦執行されてしまえば回復が不可能であることに鑑み、極めて慎重に判断すべきであることによると考えられている。
  そこで、前記刑事訴訟法第475条第1項所定の「法務大臣」とは、単に内閣総理大臣に任命された法務大臣であればよいのではなく、衆議院議員または参議院議員のいずれであれ国会議員であることを要すると解釈すべきである。
  なぜならば、死刑の執行は、いわば国家権力による殺人であるが、それが許容され関係者が殺人罪の責任を問われないのは、選挙で選出された国会議員によって構成される国会が制定した法律(刑法)をもって、死刑を刑罰の一つとして規定し、同じく国会が制定した法律(刑事訴訟法)をもって、死刑の執行について規定していること、別言すれば、刑罰としての死刑およびその執行が国民の意思に基づいているからであるが、そうであれば、死刑の執行を命令することのできる法務大臣は、国民の意思の表明手段である選挙で選出された国会議員に限るとするのが自然かつ合理的だからである。
  従って、先の参議院議員選挙に立候補したものの落選し、民意の裏付けを失った千葉景子法務大臣による前記死刑確定者2名に対する死刑の執行命令は不相当の域を超えて違法と言わざるを得ない。千葉景子法務大臣は、法律専門家たる弁護士であるから、自身の違法行為により前記死刑確定者2名を死に至らせた責任は余りにも重大である。
  私は、千葉景子法務大臣は直ちに辞任すべきであり、辞任しないのであれば、菅直人総理大臣が千葉景子法務大臣を速やかに罷免すべきであると考える。
   (なお、この記事は、本日、千葉景子弁護士宛にファクシミリをもって送付した。)

「最高裁判所判事の無知と無恥および傲慢」

2010/4/2 金曜日 17:46

1 外国人に選挙権を付与することが可能か否かに関する議論は、国政選挙(衆議院議員および参議院議員)と地方公共団体関係選挙(地方公共団体の議会の議員及び長)とで分かれている。
  前者については、肯定説は極めて少数であり、否定説が圧倒的多数であって、最高裁判所も否定説を採っている(第2小法廷平成5年2月26日判決)。そして、政治的にも、現段階では、外国人に国政選挙における選挙権を付与すべきであるとの主張はないように思われる。
    問題は後者である。なぜならば、法律的には、否定説が多数ではあるものの、次第に肯定説が増加しつつあると言われており、政治的には、政権与党である民主党のほか公明党、共産党がいわゆる定住外国人に地方公共団体関係選挙における選挙権(以下、地方参政権と表記)を付与すべきであると声高に主張し、民主党の小沢一郎幹事長が中国および韓国を訪問して地方参政権付与を約束しているからである。
2 最高裁判所第3小法廷平成7年2月28日判決(以下、本件判決と表記)は、憲法第93条第2項は、いわゆる定住外国人に地方参政権を保障したものではないとしており、前記否定説に立っている。
    ところが、前記肯定説に立つ論者も本件判決に依拠して、いわゆる定住外国人に地方参政権を付与することは憲法に違反しないと主張している。
    それでは、なぜ同一の判決が正反対の主張の根拠とされるのか、昨年8月の衆議院議員選挙に大勝して政権を獲得した民主党が地方参政権付与法案を国会に提出しようとしているのを機に、検討しておく必要があると考える。
3 本件判決は、主文において、韓国国籍を有する者の上告を棄却し、理由において、憲法第93条第2項は、『我が国に在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会の議員等の選挙の権利を保障したものということはできない。』と判示している(以下、第1判示と表記)。第1判示は、地方参政権を外国人に付与することは憲法第93条第2項に違反すると理解するのが法律家の解釈である。
ところが、本件判決の理由には、第1判示に続いて、『我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である。』と述べている部分(以下、第2判示と表記)がある。
前記肯定説は第2判示を根拠の一つとしている。
    第1判示と第2判示とが論理的に矛盾していることは明々白々であり、本件判決の理由中に第2判示が存在してはならない。
    この点に、本件判決を書いた最高裁判所第3小法廷の判事5人(可部恒雄、園部逸夫、大野正男、千種秀夫、尾崎行信の各氏)の無知が端的に表れていると言わざるを得ない。
4 それでは、前記5人の最高裁判所判事は、本件判決においてなぜ矛盾した理由を述べたのであろうか。
    私には理解不能であったが、最近読んだ月刊誌の記事によってその答えを知ることができた。
    当該記事によれば、前記最高裁判所判事の1人であった園部逸夫氏は、第2判示をした理由について、①平成11年6月24日の朝日新聞に掲載された回想録の中で、『在日の人たちの中には、戦争中に強制連行され、帰りたくても祖国に帰れない人が大勢いる。帰化すればいいという人もいるが、無理やり日本に連れてこられた人たちには厳しい言葉であり』、戦前の朝鮮で生まれた自分の体験に重ね合わせて身につまされる思いがしたことを明らかにし、②本年1月の産経新聞のインタビュー記事の中で、『政治的配慮』をしたことを認めているとのことである。
5 園部逸夫氏の前記①および②の発言は、俄には信じられないほどの重大な問題をはらんでいる。
  ①について言えば、韓国人、朝鮮人が強制連行されたか否かの歴史認識は定まっていないが、その点はともかくとして、単なる感情論であり、『すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。』と規定している憲法第76条第3項に違反していることは明らかである。
  ②について言えば、前記憲法第76条第3項に違反していることはもちろんのこと、公務員の中でも最も政治的に中立でなければならない裁判官が絶対にしてはならない行為である。
  園部逸夫氏が裁判官の最上位に位置する最高裁判所判事であったことに照らせば、前記①および②についての責任は余りにも重大である。現職であれば、弾劾により罷免(裁判官弾劾法第2条)されて然るべき行為である。
  それにもかかわらず、前記①および②から第2判示をした点に、園部逸夫氏の無恥と傲慢が現れていると言うべきである。
  この程度の人物が最高裁判所判事であったことに今さらながら驚きを禁じ得ない。

以 上