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弁護士法人柴田・中川法律特許事務所

愛知県豊橋市・静岡県浜松市の弁護士11名・弁理士2名が所属する法律特許事務所

非嫡出子の相続について

2013/8/9 金曜日 12:39

1 民法第900条第4号但書は、結婚していない男女間に生まれた子(以下、「非嫡出子(ひちゃくしゅつし)」といいます)の相続分は、結婚している男女間に生まれた子(以下、「嫡出子(ちゃくしゅつし)」といいます)の相続分の2分の1とすることを定めています。
  つまり、ある男性Aさんに、妻との間に生まれたBさんという子どもと、妻以外の女性との間に生まれたCさんがいた場合、Aさんが亡くなった時に、非嫡出子であるCさんは、嫡出子であるBさんの半分しか財産をもらえないことになります。
  この民法の定めは、きちんと婚姻届を提出して法律上の婚姻をすることを尊重する趣旨で定められたといわれています。
  ところが、この定めが、憲法の法の下の平等(憲法第14条)に反し、非嫡出子を不当に差別するものではないかということが、以前から争われてきました。例を挙げて見ていきましょう。
2 仮に、Aさん夫婦とその子どもであるBさんが、長年平穏な家庭を営んでおり、Aさんの死後、これまで会ったこともないCさんが、突然Aさんの子どもだと名乗り出てきたような場合には、長年親子として生活してきたBさんが多く財産を相続することが、理屈にかなっているようにも思えます。
  しかし、例えば、Aさんが妻と結婚してBさんが生まれたものの、すぐに事実上離婚状態となり、離婚届を提出しないまま別の女性と家庭を作り、Cさんが生まれて、長年平穏な家庭生活を営んできたような場合はどうでしょうか?この場合、Aさんと長年親子として生活してきたのはCさんであるにもかかわらず、両親が法律上の婚姻関係になかったというだけで、CさんはBさんの半分しか財産を相続することができないことになります。
  このように、家族のあり方は、それぞれの家庭によって大きく異なるにもかかわらず、一律に、非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とすることは、平等とはいえないように思われます。
  また、そもそも、嫡出子として生まれるか、非嫡出子として生まれるかは、その子どもには何の責任もないはずなのに、相続において不平等に扱われるとすれば、やはり問題があるでしょう。
3 この問題について、これまで最高裁判所は、憲法に反するという判断をしたことはありませんでした。
  しかし、この問題が争われた裁判について、最高裁判所で弁論期日が開かれたことから、近いうちに、最高裁判所が違憲の判断を下す可能性が大きくなってきました。
  家族関係が多様化した現在においては、両親が法律上の婚姻関係にあったか否かだけで相続において差を設けるのは、平等に反するとの判断が働いたものと思われます。
4 では、今後、最高裁判所で違憲判決が出た場合、相続にはどのように影響してくるのでしょうか。
  まず、違憲判決後に行われる相続手続については、現在の民法第900条第4号但書は適用されず、嫡出子と非嫡出子の相続分は平等として取り扱われることになるでしょう。また、立法府も、違憲判決を受けて、早期に同条項を削除することになると思われます。
  では、非嫡出子と嫡出子が関係する相続において、既に遺産分割がなされてしまった案件についてはどうなるのでしょうか?
  違憲判決の効力が、直ちに他の事件や過去の事件にさかのぼって及ぶわけではないので、既になされた遺産分割が覆ってしまうことにはなりません。ただし、既になされた遺産分割の当事者である非嫡出子が、本来は嫡出子と同様に相続できるはずであったのに、民法第900条第4号但書があったことによって、嫡出子の2分の1の相続分で遺産分割を成立させざるを得なかったとして、遺産分割の無効を争ったとすれば、場合によっては、無効となる可能性は残ります。
  おそらく、このような問題に対処するために、違憲判決がなされるとすれば、その判決中で、過去の遺産分割の効力に関して何らかの言及がなされると思われます。
  いずれにせよ、非常に重要な判決になりそうなので、ぜひ最高裁の判断には注目していきたいと思います。

自転車運転中の事故による損害賠償

2012/6/17 日曜日 23:42

【はじめに】
自転車は、幼児から高齢者まで幅広く使用されている身近な交通手段です。自転車には免許制度がないため、多くの人が日常的に使用しています。ただし、自転車も道路交通法上の車両に該当するため、自動車などの車両と同様に交通ルールを守らなければなりません。また、自転車事故を起こした場合には、被害者から損害賠償を求めらる可能性があります。
そこで、今回は、自転車の運転中に事故が起きた場合の法律上の責任についてお話しします。

【事例】
Aさんは、歩道と車道の区別のない道路の左側を、自転車を運転して走行していました。進行方向には見通しの悪い交差点がありました。Aさんが、特に減速することなく交差点に差し掛かったところ、左側の道路から歩行者であるBさんが飛び出してきて、Aさんの運転する自転車と接触しました。その結果、Bさんは、骨折などの怪我を負い、通院治療をして完治までに6ヶ月を要しました。
この場合、AさんはBさんに対して、法律上、どのような責任を負うのでしょうか。

【事故直後の対応について】
自転車事故が発生した場合、負傷者の救助と安全確保をしなければなりません。自転車を運転する場合にも、道路交通法72条1項により、被害者の救護義務が課せられているからです。被害者が怪我をした場合には、救急車を呼ぶなどして怪我人の手当を最優先にしてください。
また、警察への事故報告義務も課せられますので、警察への報告も忘れずにしてください。

【損害賠償責任】
1 自転車事故によって他人に損害を与えた場合、民法709条により、加害者には不法行為に基づく損害賠償責任が発生します。民法709条は、故意又は過失によって他人に損害を与えた場合に、それによって生じた損害を賠償する責任を負うと定めています。
本件の場合、Aさんは、自転車で走行中にBさんに怪我を負わせていますが、見通しの悪い交差点で減速せず、また前方への注意が不十分であったなどの過失があると考えられます。そのため、Aさんには、民法709条に基づき損害賠償責任が発生します。
2 それでは、Aさんが未成年者であった場合はどうでしょうか。
未成年者の不法行為責任については、民法712条が、未成年者が他人に損害を与えた場合、未成年者に責任能力がにない場合には賠償責任を負わないと定めています。責任能力についての裁判例をみると、およそ12歳程度(小学生以下の年齢)までは責任能力がないとされることが多く、13歳以上では認められる傾向にあります。
本件の場合、Aさんが小学生以下の年齢であれば、Aさん自身は、Bさんに対する賠償責任を負わないことになります。
一方、Aさんが中学生以上の年齢であれば、Bさんに対する損害賠償責任を負う可能性が高いといえます。
3 Aさんに責任能力が認められない場合でも、Aさんの親(親権者)など法律上の監督義務を負う人が、Bさんに対して賠償責任を負う場合があります。
民法714条は、加害者に責任能力がない場合、その者を監督する法定の義務を負う者に、被害者である第三者への損害賠償責任を定めています。
そのため、本件では、Aさんの親などの監督義務者が、Bさんに対して、損害賠償義務を負うことになります。なお、監督義務者が、監督義務を怠っていなかった場合には、被害者への賠償責任が発生しないこともあります。

【賠償すべき損害】
AさんがBさんに賠償すべき損害はどのようなものが考えられるでしょうか。
まず、不法行為による損害賠償については、基本的には事故と相当因果関係のある損害を賠償することになっています(民法416条第1項参照)。相当因果関係のある損害とは、事故があれば通常生じると考えられる損害のことをいいます。
相当因果関係のある損害として考えられるのは、治療費、通院交通費、休業損害、慰謝料などです。慰謝料は、怪我の程度や治療期間などの具体的事情によって、その金額を算定します。また、衣服や眼鏡、時計など身につけている物が壊れた場合にも、それらの損害を賠償する必要があります。
治療の結果、後遺障害が残るような場合には、後遺障害の内容や程度に応じて逸失利益(後遺障害によって将来の収入が減少する場合の損害)や、後遺障害に対する慰謝料なども、相当因果関係のある損害となります。

【過失相殺】
以上のとおり、Aさんは、Bさんに生じた損害を賠償すべき義務を負います。もっとも、必ずしも、損害全額を賠償しなければならないわけではありません。
不法行為による損害賠償においては、民法722条第2項によって、被害者にも過失が認められる場合には、過失相殺することができると定められています。過失相殺が認められる場合、賠償すべき損害額は、被害者の過失割合に応じて減額されます。被害者の過失の有無及び具体的な過失割合については、具体的な事故状況をもとにして検討することになります。
本件では、Bさんが交差点に飛び出したという事情があるため、Bさんの過失も認められると考えられ、その場合には、過失相殺をして賠償額を減額することになります。

【保険の確認】
自転車事故に関しては、自転車総合保険という自転車事故による損害の填補を目的とした保険や、個人賠償責任保険という日常生活において他人に与えた損害の填補するための保険など、いくつかの保険が用意されています。個人賠償責任保険は、自動車保険、火災保険、傷害保険などの特約として付けられている場合や、クレジットカードに付帯されている場合があります。
損害賠償の金額は事案によって様々ですが、後遺障害が認められる場合や死亡事故の場合などは、損害額が高額になることも少なくありません。そのため、自転車を使用される方は、一度、ご自身の加入されている保険を確認されることをお勧めします。

【おわりに】
自転車運転中の事故は、自動車との事故、自転車同士の事故、歩行者との事故など全てをあわせると、平成23年に14万件を超える件数となっています。自転車が日常生活に密着した交通手段であることを考えると、自転車に関わる事故に巻き込まれる可能性は少なくありません。
過失割合や具体的に賠償すべき損害の種類や範囲、金額の算定については、事案によってその内容が異なるものであり、法律的な評価に関わる問題であるため、自転車事故のトラブルが発生した場合には、弁護士にご相談されることをお勧めします。