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弁護士法人柴田・中川法律特許事務所

愛知県豊橋市・静岡県浜松市の弁護士11名・弁理士2名が所属する法律特許事務所

職務中に事故を起こしてしまった

2014/1/22 水曜日 19:30

【事 例】
 私(Aさん)は、とある会社で営業の仕事をしています。
 先日、会社の車を利用して営業に出かけたのですが、次の営業先での対応を考えすぎてしまい、運転の注意が散漫になり、車をガードレールに衝突させてしまいました。
 幸いにも周りに人はおらず、怪我人は出ませんでしたが、会社の車が壊れてしまいました。
 事故を受け、会社は、車を修理に出しました。
 暫くして、私は、会社から、「修理費用として50万円掛かった。」、「車両保険には入ってない。」、「Aさんが注意して運転をしていなかったのだから修理費用を負担してもらう。」などと言われました。
 また、会社は、後日、私に対し、「ガードレールの修理費用の請求がきたから20万円払っておいたよ。」、「保険を使うと等級が下がる。等級が下がって保険料が上がるのは困るから保険は使わない。」、「Aさんのミスなのだから、Aさんがガードレールの修理費用を払って下さい。」などと言われました。
 私のミスで事故を起こした以上、修理費用を支払わなければならないのでしょうか。

【検 討】
 一般的に、他人の者を壊した場合、所有者に対して修理費用を支払う必要があります(民法709条)。
 本件の場合、会社の車などをAさんが壊し、会社がAさんに代わって修理費用の支払いをしている以上、Aさんは、会社に対して修理費用の支払いをしなければならないようにも思えます。

 
 しかし、使用者は、被用者を用いて利益を上げているにもかかわらず、被用者のミスについては一切責任を負わないとすると、公平に反します。そのため、被用者のミスで事故が起こった場合にも、使用者は全ての責任を被用者に押しつけることは認められません。これを報償責任の原則といいます。

 判例においても、使用者から被用者に対する損害賠償および求償金の請求に関して、「使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被つた場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきである。」(最判昭和51年7月8日民集30巻7号689頁)として、損害賠償および求償金の請求額を4分の1に制限しました。
 

 具体的にどのくらい制限されるかは、上記判例で述べられているように、諸般の事情を考慮することになりますが、使用者の被用者に対する請求が大きく制限されることも多いです。過去の裁判例の中には、被用者の過失の程度や従前の取扱い等を理由として会社から従業員に対する損害賠償の請求を認めなかったものもあります(京都地判平成23年12月6日交民44巻6号1520頁)。

【おわりに】
 もともと使用者が被用者よりも優位な地位にあることが多く、これに加え、被用者自身が事故を起こしてしまったという責任を感じ、損害を全て支払わなければならないと思いがちです。
 しかし、必ずしもそのようなことはなく、上述のとおり、使用者から被用者に対する損害賠償や求償金の請求が制限されることが多いです。制限の程度については、諸般の事情が考慮されるため、一度お近くの弁護士に相談されることをおすすめします。

相続人がいない!

2013/2/28 木曜日 21:06

【はじめに】

 高齢化社会を迎え、総務省の発表によれば、総人口に占める65歳以上の方の割合は、平成24年9月15日現在、24.1%となり、約4人に1人は高齢者ということになっています。

 そのような中、高齢者が一人で住居を借りて亡くなることが増えていますが、賃貸人と賃借人の法律関係どのようになるのでしょうか。

 

【事例】

 Aさんは、高齢のBさんにアパートの一室を賃貸していましたが、Bさんが入院先の病院で亡くなりました。この場合、私さんとBさんとの賃貸借契約はどうなるのでしょうか。また、室内には、Bさんが用意した家具等(以下、残置物といいます。)が残っていますが、Aさんはこれらを勝手に処分してよいのでしょうか。

 

【相続人の調査】

 賃貸借契約は、賃借人が死亡しても終了せず、賃借人たる地位が相続人に当然に承継されます。

 そのため、賃貸借契約を終了させ、また残置物の処分するには、相続人を調査することが必要となります。相続人の調査は、賃借人が出生してから死亡するまでの戸籍謄本等を取り寄せることで行います。

 

【相続人がいる場合】

 相続人がいる場合、賃貸借契約は、その相続人に承継されます。相続人が協力的な場合には、Aさんは、Bさんの相続人との間で、賃貸借契約の合意解除をします。その場合、AさんとBさんの相続人との間で、残置物の所有権を放棄する旨の合意を取り交わすことで、Aさんは、これを処分することができるようになります。

 一方、相続人が非協力的な場合には、通常は、しばらくの間、賃料が未払いとなるので、Aさんは、Bさんの相続人に対して、賃料未払いを理由として賃貸借契約を債務不履行に基づいて解除することになります(なお、判例は、当事者間の信頼関係を破壊すると認めるに足りない特段の事情がある場合には、賃貸借契約の解除は認められないとしていますので、注意が必要です。)。Bさんの相続人が任意に部屋明け渡さない場合、Aさんは、Bさんの相続人に対して、建物の明け渡しなどを求める訴えを提起し、強制執行をすることになります。

 

【相続人がいない場合】

 相続人の調査をした結果、相続人がいない場合もあるでしょう。

 この場合でも、Aさんは、勝手に契約を解除して、残置物を処分することはできません。

 民法は、相続人がいない場合、相続財産は、法人となる旨を定めています(民法951条)。そして、相続財産の管理や処分は相続財産管理人が行うことになります。相続財産管理人は、利害関係人等の請求によって、裁判所が選任します(952条1項)。

 賃貸人は利害関係人に該当しますので、Aさんは、裁判所に対して、相続財産管理人の選任を請求し、選任された相続財産管理人との間で、相続財産である賃借権や残置物の処分の手続を行うことになります。

 なお、Bさんに相続人がいない場合でも、内縁の配偶者と同居している場合などにおいては、賃借権が内縁の配偶者に承継されることありますので、注意が必要です(借地借家法36条参照)。

  

【最後に】

 賃借人が死亡した時に賃貸借契約が終了する「終身建物賃貸借契約」があります(高齢者の居住の安定確保に関する法律52条)。

 終身建物賃貸借契約を利用するためには、施設面や運営面等の認可基準をクリアすることが必要ですが、補助金や税制面の優遇を受けることができます。

 前回のコラム「定期建物賃貸借」(2013年1月31日付)では、一定期間に限って賃貸借契約をすることができることをご説明しましたが、これと併せて、ご自身の希望にあった賃貸借契約を締結してみてはいかがでしょうか。