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弁護士法人柴田・中川法律特許事務所

愛知県豊橋市・静岡県浜松市の弁護士12名・弁理士2名が所属する法律特許事務所

職務中に事故を起こしてしまった

【事 例】
 私(Aさん)は、とある会社で営業の仕事をしています。
 先日、会社の車を利用して営業に出かけたのですが、次の営業先での対応を考えすぎてしまい、運転の注意が散漫になり、車をガードレールに衝突させてしまいました。
 幸いにも周りに人はおらず、怪我人は出ませんでしたが、会社の車が壊れてしまいました。
 事故を受け、会社は、車を修理に出しました。
 暫くして、私は、会社から、「修理費用として50万円掛かった。」、「車両保険には入ってない。」、「Aさんが注意して運転をしていなかったのだから修理費用を負担してもらう。」などと言われました。
 また、会社は、後日、私に対し、「ガードレールの修理費用の請求がきたから20万円払っておいたよ。」、「保険を使うと等級が下がる。等級が下がって保険料が上がるのは困るから保険は使わない。」、「Aさんのミスなのだから、Aさんがガードレールの修理費用を払って下さい。」などと言われました。
 私のミスで事故を起こした以上、修理費用を支払わなければならないのでしょうか。

【検 討】
 一般的に、他人の者を壊した場合、所有者に対して修理費用を支払う必要があります(民法709条)。
 本件の場合、会社の車などをAさんが壊し、会社がAさんに代わって修理費用の支払いをしている以上、Aさんは、会社に対して修理費用の支払いをしなければならないようにも思えます。

 
 しかし、使用者は、被用者を用いて利益を上げているにもかかわらず、被用者のミスについては一切責任を負わないとすると、公平に反します。そのため、被用者のミスで事故が起こった場合にも、使用者は全ての責任を被用者に押しつけることは認められません。これを報償責任の原則といいます。

 判例においても、使用者から被用者に対する損害賠償および求償金の請求に関して、「使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被つた場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきである。」(最判昭和51年7月8日民集30巻7号689頁)として、損害賠償および求償金の請求額を4分の1に制限しました。
 

 具体的にどのくらい制限されるかは、上記判例で述べられているように、諸般の事情を考慮することになりますが、使用者の被用者に対する請求が大きく制限されることも多いです。過去の裁判例の中には、被用者の過失の程度や従前の取扱い等を理由として会社から従業員に対する損害賠償の請求を認めなかったものもあります(京都地判平成23年12月6日交民44巻6号1520頁)。

【おわりに】
 もともと使用者が被用者よりも優位な地位にあることが多く、これに加え、被用者自身が事故を起こしてしまったという責任を感じ、損害を全て支払わなければならないと思いがちです。
 しかし、必ずしもそのようなことはなく、上述のとおり、使用者から被用者に対する損害賠償や求償金の請求が制限されることが多いです。制限の程度については、諸般の事情が考慮されるため、一度お近くの弁護士に相談されることをおすすめします。