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弁護士法人柴田・中川法律特許事務所

愛知県豊橋市・静岡県浜松市の弁護士12名・弁理士2名が所属する法律特許事務所

生命保険と相続

【はじめに】
 個人年金保険を含めれば、およそ9割の世帯が加入していると言われる生命保険。
 実際、多くの方が生命保険契約を締結しておられると思います。
 では、実際に生命保険契約の被保険者が亡くなった場合に、遺族はどのように死亡保険金を取得するのでしょうか。
 今回は、生命保険と相続の関係についてご説明します。
【事例①】
 夫Xには、妻Aと子Bがいます。Xは、自らを被保険者とし、死亡保険金を2500万円とする生命保険契約を締結し、
 その受取人をAに指定しました。Xが死亡した場合、Bは、Aに対して、
 死亡保険金の半額1250万円を請求できるのでしょうか。
 この事例のように、保険契約者(X)が相続人中の特定の者(A)を保険金受取人と指定した場合について、
 最高裁判所昭和40年2月2日判決は、次のように判示しました。
  「保険金受取人として……相続人たるべき個人を特に指定した場合には、
  右請求権は、保険契約の効力発生と同時に右相続人の固有財産となり、
  被保険者(兼保険契約者)の遺産より離脱している」
 最高裁は、特定の者が保険金受取人として指定された場合には、
 死亡保険金は保険金受取人の財産であって、相続財産ではないと判示しました。
 したがって、【事例①】の場合では、死亡保険金2500万円は、保険金受取人であるAの財産ですので、
 Bの請求は認められません(ただし、後述の「特別受益」に注意する必要があります)。
【事例②】
 事例①において、Xが保険金受取人を被保険者(X)の「相続人」と指定していた場合、
 死亡保険金はどのように扱われるのでしょうか。
 先ほどの昭和40年最高裁判決に基づけば、保険金受取人が「相続人」と指定された場合、
 死亡保険金は、相続人の固有の財産となります。
 したがって、【事例②】においては、死亡保険金2500万円はAとBの固有の財産となり、
 相続の対象とはなりません。
 しかし、AとBの固有の財産となるといっても、
 具体的にAとBは、死亡保険金をいくらずつ取得するのでしょうか。
 この保険金受取人を被保険者の「相続人」と指定した場合について、
 最高裁判所平成6年7月18日判決は、次のように判示しています。
  「保険契約者が死亡保険金の受取人を被保険者の『相続人』と指定した場合は、
 特段の事情のない限り、右指定には、相続人が保険金を受け取るべき権利の割合を
 相続分の割合によるとする旨の指定も含まれているものと解するのが相当である。」
 この平成6年最高裁判決によれば、「相続分の割合による」とされており、
 AとBは、死亡保険金をそれぞれの法定相続分である2分の1ずつ取得することになります。
【死亡保険金と特別受益】
 共同相続人の中に、被相続人から遺贈を受けたり、生前に贈与を受けたりした者がいる場合に、
 この遺贈や生前贈与を考慮して遺産を分割しないと不公平になってしまいます。
 そこで、民法は、これらを「特別受益」として、相続分の計算上、
 特別受益を被相続人が相続開始時に有していた財産に加算して(これを「持戻し」といいます)、
 各相続人の相続分を算定すると規定しています(民法903条1項)。
 では、保険金受取人として死亡保険金を受け取った者がいる場合、
 保険金受取人だけが死亡保険金を受け取っているとして、
 死亡保険金を「特別受益」として持戻して計算することになるのでしょうか。
 これについて、最高裁判所平成16年10月29日判決は以下のように判示しました。
  「保険金受取人とされた相続人が……取得した死亡保険金は、
  民法903条1項に規定する遺贈または贈与に係る財産には
  当たらないと解するのが相当である。」
 最高裁は続けて、次のように判示しています。
  「もっとも、……保険料は、被相続人が生前保険者に支払ったものであり、
  ……保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が
  民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると
  評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、
  当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相当である。」
 すなわち、他の共同相続人との関係であまりに不公平な場合には、
 例外として、特別受益に準じたものと考えて、持戻して計算すべきと判示しているのです。
【おわりに】
 死亡保険金を巡る議論は、まだまだあります。
 死亡保険金は、相続と密接に関連することもあり、相続人間で争いに発展することも考えられます。
 一度、ご自身の生命保険契約の内容をご確認してみてはいかがでしょうか。