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弁護士法人柴田・中川法律特許事務所

愛知県豊橋市・静岡県浜松市の弁護士12名・弁理士2名が所属する法律特許事務所

事業承継について、考えてみませんか?

 会社経営者にとって、「事業承継」をどのように行うかは、大変悩ましい問題です。
 経営者自身が元気なうちは、つい先送りしがちな問題ですが、何も対策を取らないまま、経営者が不慮の事故や病に倒れたりした場合、会社が立ちいかなくなってしまうことも十分に考えられるので、早めの対策が必要です。
 では、具体的に事業承継には、どのような問題があるのでしょうか。
 事業承継は、①ノウハウなどの経営そのものの承継②自社株式・事業用資産の承継という2つの側面があり、法律的に主に問題となるのは②の方です。
 現経営者が自社株式や会社の土地建物などの事業用資産を所有している場合、円滑な事業承継を行うには、自社株式及び事業用資産を現経営者から後継者に集中して引き継がせる必要があります。
 ところが、何も対策を取らずに現経営者が亡くなった場合、自社株式も事業用資産も、原則として、現経営者の法定相続人が法定相続分に従って相続することになってしまいます。
 例えば、代表取締役である現経営者に子どもが4人おり、そのうち、実際に経営実務を担当している取締役である長男を後継者にしたいと考えていたとします(現経営者の配偶者はすでに亡くなっているものとします)。しかし、現経営者が特に対策を取らず亡くなってしまうと、兄弟4人が4分の1ずつ現経営者の遺産を相続することになるので、現経営者が自社株式を100%所有していた場合、長男は、25%しか相続できません。すると、仮に長男とほかの兄弟が対立した場合、株式の75%を所有する他の兄弟から、長男が取締役を解任されてしまい、会社経営にかかわることができなくなってしまう危険が生じます。そうなると、これまで経営実務を担ってきた長男の不在により、会社経営に混乱が生じ、会社の存立自体も危うくなる可能性もあります。
 このような事態を避けるために、いくつかの対策が考えられます。
 まず、現経営者が生前に、自社株式・事業用資産を後継者に贈与したり、または、後継者にすべて相続させる旨の遺言を作成する方法があります。これにより、ひとまずは後継者に自社株式・事業用資産を集中することができます。
 しかし、この生前贈与や遺言が、民法に定められた「遺留分」を侵害する場合は、問題が生じてきます。「遺留分」とは、相続人に保障された最低限の権利であり、先の例でいうと、現経営者の子4人は、それぞれ、8分の1の遺留分を有するため、長男に対して他の兄弟3人が、それぞれ遺留分として遺産の8分の1ずつを請求した場合、結果として、自社株式や事業用資産が分散してしまう可能性も十分にあります。
 このような、事業承継と遺留分との調整を図るため、平成20年に成立した経営承継円滑化法には、遺留分に関する民法の特例が定められています。この特例は、現経営者の推定相続人全員の合意により、自社株式を遺留分算定の基礎財産から除外することや、遺留分算定の際の自社株式の価額をある時点に固定することができることを定めています。現経営者の影響力があるうちに、これらの対策をとることができれば、遺留分による紛争を防いで、自社株式を後継者に集中させることができます。
 また、そのほかにも、会社法に規定のある「種類株式」を事業承継に活用する方法もあります。例えば、議決権のない株式を発行しておいて、後継者以外の者に議決権のない株式を、後継者には通常の議決権のある株式をそれぞれ取得させて、後継者に議決権を集中させるという方法があります。
 事業承継対策として、どのような方法を取るのが良いかは、それぞれの会社の状況によって異なります。専門性の高い難しい分野になりますので、ぜひ、早めに弁護士にご相談いただきたいと思います。