法律に役立つ情報を発信します │ 法律コラム │ 柴田法律特許事務所

問い合わせ・相談予約

弁護士法人柴田・中川法律特許事務所

愛知県豊橋市・静岡県浜松市の弁護士12名・弁理士2名が所属する法律特許事務所

労働時間

1 はじめに
居酒屋で飲んでいると、隣の席から「いや~、うちの会社遅くまで仕事させておいてさあ、それで給料でないんだよなあ、サービス残業辛いよ」との声がよく聞こえてきます。居酒屋では単なる会社への愚痴で終わる話ですが、発展させてこの問題を法律的に考えるとどうなるのでしょうか、簡単なケースをもとにお話ししたいと思います。

2 事例

(1)質問1
私は、販売員をしています。その日はとても忙しかったので、定時の午後6時を過ぎても店を開けるよう言われ、私も残ってレジ打ちに追われていまし た。しかしながら、午後7時からは一人もお客さんが来なかったので、8時に閉めることになったのですが、午後7時からの1時間ボーっとして過ごしてし まいました。使用者からは「キミは、午後7時から8時までの1時間までは何もしていなかったじゃないか。残業代なんて出るはずがない」と言われてしま いましたが、午後6時から午後8時までの2時間分につき、残業代はもらえますよね?

(2)質問2
私は、ビルの警備員をしています。業務内容は夜間の巡回、監視ですが、業務の合間に仮眠時間が2時間だけ認められています。場所はビル内の  仮眠室で、ビル内の警報が鳴れば対応しなければなりません。なぜかこのビルではよく警報が鳴るんですよ・・。使用者からは、「キミは、その時間寝て いるじゃないか。その時間分の賃金は払わない」と言われています。確かに私はその時間には寝ていますけど、この時間の分の給料も出ますよね?

3 労働時間とは

(1)この事例には、質問者の地位や残業代としての手当支給、そして就業規則上の規定など様々な問題がありますが、今回は、賃金、時間外手当を支 払うための前提となる労働時間に絞って述べていきたいと思います。

(2)まず、労働者が労働をしたことに対する対価として、使用者に対して賃金請求をすることができるのは当然です。今回の事例1では、質問者の働いた午後6時から8時までの時間、事例2では仮眠時間としての2時間が労基法上の「労働時間」にあたれば、賃金または時間外手当を支払ってもらえる可 能性があります。
では、「労働時間」とはいかなる時間を指すのでしょうか。
最一小判平成12・3・9民集54巻3号801頁、判タ1029号161頁・三菱重工長崎造船事件では、「労働時間」とは、労働者が使用者の指揮命令下 に置かれている時間、をいい、この労働時間に該当するか否かは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かによ り客観的に定まる旨判断しています。
また、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていた、という部分について、上記判例は、「労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所 内で行うことを事業者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外に行うものとされている場合であっても、当該  行為は特段の事情ない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ・・る」と述べています。

(3)では、今回の事例1、事例2にそれぞれ当てはめてみましょう。
(ⅰ)事例1
本件では、質問者は午後6時から午後7時までは、客の対応をしていたとのことですから、「労働時間」に該当するのは誰の目から見ても明らかです。
午後7時から午後8時までの間は、一人も客が来なかったとのことですが、もし客が来たら質問者は対応をするよう言われている(もしくは、質問者もそ れを分かっているので何も言われていない)、というのが普通ですよね。面倒という理由で対応しなかったら使用者に怒られますよね。すなわち、これ  は、使用者の指示があれば直ちに作業に従事しなければならない時間、ということになるわけです。
したがって、「労働時間」にあたるわけです。
(ⅱ)事例2
本件では、質問者は仮眠時間といえども、ビル内で仮眠するよう使用者から言われており、家に帰って眠れるというわけではありません。また、ビル内 の警報が鳴れば対応するよう使用者から言われていることも、質問者が使用者の指揮命令下にあると評価できます。
確かに、質問者の対応は、警報が鳴ったときに限られるとは言えますが、頻繁に警報が鳴り、対応に駆り出されるという点で、対応の必要が皆無に等し いなどの事情はありませんから、指揮命令下におかれているといえます。
したがって、これも「労働時間」にあたります。

4 おわりに
労働時間をめぐる賃金、時間外手当の問題には、今回取り上げた問題以外にも、冒頭で述べたように、賃金請求者が「管理監督者」の地位にあるか、割増賃金に対応する手当の支給がされているか、など、複雑な問題が存在しています。
後々のトラブルを防ぐためにも、早めに弁護士に相談することをお勧めします。