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弁護士法人柴田・中川法律特許事務所

愛知県豊橋市・静岡県浜松市の弁護士12名・弁理士2名が所属する法律特許事務所

ペットの飼い主の責任

【はじめに】
 少子高齢化や単身世帯の増加、社会的ストレスの増大などを背景に、犬・ネコの飼育総数は年々増加傾向にあるようです。
 動物を飼うことは、動物の命を預かることであり、飼い主は、動物が健康で快適に暮らせるようにするとともに、社会や近隣に迷惑を及ぼさないようにする責任があります。
 そこで、今回は、動物の飼い主の法律上の責任について、少しだけお話ししたいと思います。

 

【質 問】
 先日、自転車に乗って道路を運転中、急に飛び出してきた犬に驚き、犬との衝突を避けようとして転倒してしまいました。
 転倒したことにより、自転車が壊れ、私自身もケガをしてしまいました。
 この場合、犬の飼い主に責任を問うことは出来ますか?

 

【民法第718条】
 私生活の基本を定めた民法には、「動物の占有者等の責任」を定めた条文があります。

  民法第718条
   1 動物の占有者は、その動物が他人に与えた損害を賠償する責任を負う。
     ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもって管理したときは、この限りでない。
   2 占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。

 つまり、動物の飼い主は、飼っている動物が他人に損害を与えたときは、それによって生じた損害を賠償しなくてはならないのが原則だけれども、「相当の注意」をもって管理をしていたということを立証した場合には、責任を免れるということです。

 
【相当の注意】
 では、飼い主が、「相当の注意」をもって管理をしていたか否かはどのように判断されるのでしょうか。

 「相当の注意」とは、動物の種類および性質に従い、通常払うべき程度の注意義務を意味し、異常な事態に対処しうべき程度の注意義務まで課したものではありません。
 そして、その具体的な注意義務の内容は、個々的な事案に即して具体的に判断されるのですが、一般的には、①動物種類・雌雄・年令、②動物の性質・性癖・病気、③動物の加害歴、④占有者につき、その職業・保管に対する熟練度、動物の馴致の程度、加害時における措置態度など、⑤被害者につき、警戒心の有無・被害誘発の有無・被害時の状況などの諸点が考慮されています。

 もっとも、最近の裁判例では、「相当の注意」をもって管理していたとして、飼い主に落ち度がなかったとされるケースはほとんどないようです。そのため、事実上、無過失責任に近い、動物の管理者にとって、とても厳しい規定となっているようです。
 動物の管理者にとって厳しい判断がされることが多い理由としては、動物による事故が続発している昨今、動物による事故を起こさないように万全の手段をとることが、善良な飼い主の責任であると考えられるようになったことが挙げられます。

 

【被害者側に過失がある場合】
 ただし、被害者側にも過失がある場合があります。ご質問のケースで言えば、被害者自身にも脇見運転や速度違反等があったという場合です。
 被害者側にも過失があった場合には、被害者側の過失が考慮されて、損害賠償額が、被害者側の過失割合に応じて減額されることとなります。

 

【因果関係】
 では、ご質問とは異なり、『背後から犬に吠えられために驚いて転倒した』という場合には、犬の飼い主は転倒により発生した損害について責任を負うのでしょうか。
 これは、法律的には、因果関係の問題とされています。

 「犬が吠えただけなのだから、飼い主に責任はない」から因果関係は認められないと簡単に判断されるわけではなく、因果関係が認められるか否かについて、個別具体的な詳細な事情を考慮して判断されます。
 そのため、『犬が、単に1回、原告に対し、吠えたというにすぎず、原告に飛びかかろうとしたことはないと認定した上で、「本件犬が原告に向かって吠えたことは、原告に対する一種の有形力の行使であるといわざるを得ず、犬の吠え声により驚愕し、転倒することは、通常あり得ないわけではないから、本件犬が吠えたことと原告の転倒との間には相当因果関係がある』(横浜地方裁判所平成13年1月23日判決)として飼い主の責任を認めた裁判例も存在します。

 

【おわりに】

 昨今のペットブームを反映してか、ペットを巡るトラブルが跡を絶ちません。
 動物を飼っている人はもちろん、飼っていない人も、いつ、トラブルに巻き込まれるか分かりません。
 トラブルに巻き込まれた際、話し合いで解決できないようであれば、お近くの弁護士にご相談されることをお勧めします。